2013年11月21日
認知症患者の事故 坪田英煕
最近、認知症の父親が鉄道線路に入り込んで電車にはねられて死亡し、鉄道会社がこの事故で発生した損害の賠償を家族に求めた訴訟について、裁判所が家族の責任を認めて賠償を命じるということがありました。
事故を発生させ、数千、数万という乗客に影響を及ぼし、鉄道会社に多額の損害を与えた責任は決して軽くはありません。
しかし、この事件の場合、家族はその愛情と義務感から数年に渉って父親を自宅で介護し、その負担、疲労、睡眠不足のためについ眠り込んだ僅かな隙に父親が外にさ迷い出て事故を起すに至ったものであり、健康な成人が故意又は過失によって事故を起した場合や親の手を離れた幼児が事故に遭うのと同様に判断するのは間違いではないでしょうか。
(子供の保護者の責任と認知症患者の家族の責任は異質のものです。育児は日常生活の一部ですが、成人の認知症患者を自宅で介護する家族の負担には、周りの想像を絶するものがあります。)
認知症患者に係わる事故は今後ますます増加します。認知症患者を個々の家庭で抱え込むのではなく、施設とサービスや制度の拡充、更には地域社会全体での見守りなど社会的な受け入れの体制が必要です。
2013年11月21日 坪田英煕