2013年12月5日
100歳を超えた母のこと 篠島秀明
今年の3月で100歳になった私の母は、昨年までは聴力の低下があるくらいで、他には体に特に悪いところはなく、足の衰えを防ぐ為に、外へ出て家の周りを歩いたりして、すこぶる元気に毎日を過ごしておりました。ところが、昨年12月の半ばごろから、急に歩行に不自由が生じるようになり、年末には、一人で歩くのが困難で、ベッドから立ち上がるのにも、人の助けを借りなければいけないようになってしまいました。
私ども夫婦と母の三人暮らしでしたが、母の身体の急な変化がどこから来ているのかを知るのがまず大切と思い、今年の初め、大学病院に2週間の検査入院をして診てもらった結果は、特に重大な内臓疾患等は見られず、年相応の身体の衰えと思って下さいとの診断でした。とは言っても、母の年齢は100歳を超えており、先がどうなるかはっきりした見通しの立たないまま、私ども夫婦だけではこの状況にはとても対応できないので、初めて介護保険の適用を申請し、目黒区から紹介して貰ったケアマネージャー、それから訪問看護師、在宅診療医師といった周りの方々の助けを借りながら、今年の初めから、母の自宅介護生活を続けることになりました。
ところが驚く事に、母には何とか回復したいという強い意欲があったからでしょうか、医師のリハビリのアドバイスにより、横棒につかまっての足踏みから始まって、人に支えてもらいながらの歩行訓練を繰り返し、現在は、家の中だけですが、人の助けを借りないで自分だけで歩けるようになるまで回復してきています。
これは母の身近にいる私どもにとっては大変に有り難いことですが、同時に「人間には、100歳を過ぎてもこれだけの回復する力が備わっている」ということを教えてくれる、私達への強いメッセージでもありました。
このように、母が回復した一つの要因として、食生活との関係があるように思われます。それまでは母の食生活は、高年齢だからという事で、野菜、果物といった軽いもので済ませていましたが、これも医師のアドバイスで、肉、魚といった高蛋白質の食べ物も意識してしっかり取るようにし、その効果もあったようです。
それと、ある人から「お母様は100歳を過ぎていますから、それまでの友達、仲間も段々と減っていく筈なのに、そういう場合、お母様は何を生甲斐とされているのでしょうか」と問われたことがありますが、母は約40年前に亡くなった父と結婚前に取り交わした手紙の数々を今でも大切に保管し、日頃から折に触れてそれらを読み返しており、「父は亡くなった今でも、何処かで何らかの形で生きている」と信じていて、それが母の生きる心の支えになっていることもあると思います。
今年から始まった約1年間の夫婦共々の母の介護生活を経験して、年齢がいくつになっても心の若々しさを何時までも保つことの大切さを痛感させられています。
2013年12月5日
篠島秀明