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2013年12月6日

パアゴラについて 荻野鐵人

 父が昭和32年からはじめた同人誌には、中川一政、成瀬無極、岩佐東一郎、板倉鞆音、丸山 薫、斉藤玉夫、井村恒夫、竹中 郁、村野四郎、桑原武夫、北川冬彦、室生犀星、山之口 貘、亀井勝一郎、結城哀草果、更科源蔵、神保光太郎、小林 克、深尾須磨子、三好達治、田中冬二、津村秀夫、田中梅吉、野村章常、小野十三郎、島崎敏樹、松井好夫、尾崎一雄、田宮虎彦、堀 要、大木 実、山口誓子、藤原義江、近藤 東、城山三郎、砂原美智子、棟方志功、津村秀夫、小堀杏奴、安西冬衛、田中克己、熊沢復六、中河与一、大山定一、笹澤美明、高橋義孝、野田宇太郎、木山捷平、大中 恩、保田与重郎、木下夕爾、杉山平一、串田孫一、菱山修三、阪本越郎、藤枝静男、小高根二郎、堀口大学、稲垣足穂、吉村正一郎、小山正孝、杉浦明平、伊藤佳一らの層々たる文人墨客らが寄稿し、昭和40年12月まで第14号で終わっております。

 この誌だけの発表ならば大変惜しいことだと思います。もしご本人あるいは遺族の方のご了解が得られるならこのコラムで再び陽の目を見させたいと思うのですが、もしご意見があればお知らせください。
 父が書いた1号の編集後記を原文のままご紹介します。

『 この春、詩人の丸山薫氏が私(荻野)の所に入院され、東大名誉教授、順天堂大学外科部長福田保先生の手術を受けられたことがありました。
 毎日、その方面の見舞の士が多く、私も廻診が済んだあとなど、丸山氏の病室で、いろいろとお話を聴いて、異った仕事でも、互に共鳴する点があることを識りました。

 丸山氏は、まもなく全治退院されました。或る午後、お逢いした折に「自然科学方面の医人と、精神文化方面の作家や詩人とがくつろいで話し合える喫煙室のような雑誌があると好いですね」と私が申しましたら「それは好いですね」と丸山氏は答えられました。話がはずんで、「パアゴラ」という誌名まできまってしまいました。
 「パアゴラ」というのは花園にある、蔓ばらなどを這わせるための、木などで組んだアーチのことです。それから、私達共通の友人、愛知大学ドイツ文学部教授の板倉氏にお仲間に入ってもらいました。

 私の病院に入院している患者は、それが内科的患者であっても、外科的患者であっても、治療上の参考とするために、すべて精神神経科専門家の廻診を、願って居りますが、それは多くの場合、神経科の大家である斉藤教授にお願い申して居ります。
 この「パアゴラ」の主旨を斎藤教授に、申しあげましたところ「それは.面白いかもしれんね」と言ってくださって、東大神経科の内村教授にも、日大神経科の井村教授にも、原稿依頼の御手紙まで書いて下さいました。
 東大の内村教授は、ドイツから御帰朝になられたばかりで、御多忙を極め、今回は玉稿をいただくことができませんでした。内村教授には、大変失札かと存じましたが、斎藤先生宛の御端書を、掲載させていただきました。井村教授は、「パアゴラ」に玉稿をお寄せ下さった二日後、御渡欧された旨、御端書をいただきました。はるかに御健康をお祈りします。

 表紙は、中川一政氏、カットは、竹中郁氏にお願いしてユニイクな作品をいただくことができました。深謝致します。

「パアゴラ」は、隔月に刊行されます。(荻野)

昭和31年12月25日 印刷
昭和32年 1月 1日  発行 』


  • 共立荻野病院             院長 荻野鐵人
  • 共立荻野病院             院長 荻野鐵人

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