2013年12月11日
イキ・イキ・エイジング 【第二回 食欲の秋ですが】 後藤 眞
今時、古くさい諺ですが、「柿の実が赤くなると、医者の顔が蒼くなる」と言いました。生活や地球環境が激変し、重労働の上に食事にも事欠く時代と、すべてが自動化され、エネルギー消費のない飽食の現代とでは、条件が違いすぎます。
いかに先人の知恵とは言っても、時代に合わせた大幅な、時には、真逆な修正が必要な過去の智恵が多すぎます。しかし、いかに時代が変わっても、秋は、病気も少なければ、死者も少なく、医者が暇を持てあます、ある意味よい季節には違いありません。うまい具合に、学会シーズンで、あまり患者さんに迷惑をかけることなく、医者は新しい情報を発表し、吸収できる季節です。
現代は、まだ、科学的に証明されてはいませんが、多くの医者が、カロリー制限を薦める時代です。人間は、進化の過程で、節約遺伝子の獲得という万全の対策を採りました。つまり、わずかな食糧しか得られない、極度の飢えの原始的な環境でも、獲得したなけなしの食糧を内蔵脂肪として蓄積し、厳しい寒さや過酷な労働に必要なエネルギーを最大限に、活用できる仕組みを創造したのです。そのため、現代のように食糧の供給が充分な状態では、その節約遺伝子の働きが、徒となって余分なカロリーが蓄えられ、簡単に内蔵肥満になり、動脈硬化、糖尿病、老化という現代人のすべてが冒される病気になります。
また、文明は、便利さ、快適さを追求し、人間の肉体労働を極度に減らすことに成功したため、万人が、肉体作業から解放され、運動不足になっています。
節約遺伝子、過剰食糧、運動不足の「死の三拍子」が揃って、我々は肥満という21世紀最大の病気を抱えることになってしまいました。肥満は、「炎症老化」の基になり、老化促進病です。身体が成長し続ける若いうちはまだいいのですが、思春期を過ぎれば、スポーツマンや肉体労働者を除けば、基礎代謝以上に食事から摂取するエネルギーは、内臓脂肪や皮下脂肪となって、蓄積した身体を蝕み始め、老化が起きます。
とはいいながら、食べることは、生きる上での基本だと思います。伝統的な和食や、地中海式スローフードなど質の良い食事と、歯ごたえのある食材を50回噛むフレッチャー法を取り入れた上手な食事作法で減量を心がける必要があります。
ちなみに、柿は、葉をお茶にしますと降圧、シミ予防効果があり、実も花も根も木の皮まで薬になる、まさに医者泣かせの果物です。