2013年12月12日
イキ・イキ・エイジング 【第三回 なぜ若さを求めるのか?光老化ラホヤ海岸での考察】 後藤 眞
私は、30年ほどまえに、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴ郊外のラホヤに住んで、リウマチの研究をしていました。私の老化に対する考えを深めることの出来た思い出の地です。サンディエゴは、アメリカ人が、最も住みたい街のトップ3に入るほどの人気スポットですが、ラホヤは、豪華な介護施設や有名な病院やクリニックが林立している老人の街でもあります。
住んでいた太平洋を見渡すことの出来るアパートは、私以外すべての住人が引退した老人ばかりで、老化やリウマチの研究をしている医師として、ずいぶん重宝がられました。宗教のたまものなのでしょうか、多くの住人、あるいはお友達が、互いに最低限の日常的な助け合いをしていますが、そうした他人からの援助を一切断っているヒトも少なからずいました。90歳を越えますと、車の免許更新も制限が加わりますが、それでもアルツハイマー病や身体機能が著しく侵されない限りは、自分で運転して、介護施設への入居を拒絶します。
背後に砂漠が迫っているサンディエゴは、海岸沿いにもかかわらず、年間を通して雨が降ることはまずなく、抜けるような碧空から紫外線が肌に食い込んでくる強烈な太陽光の街です。湿気で風景ぼやけている日本では、とても考えられない乾燥した空気で、すべてがなんのくもりもなくあらわになる環境です。真夏になっても海岸が人で賑わうことはありませんが、それでも、海草の漂着している海岸のわずかなビーチでは、午後になると、堂々とカラフルな水着と派手なサングラス姿でひたすら日光浴をする超肥満体老人と飽きもせずサーフィンに興じるビーチボーイ達が現れます。いずれも強い光老化で肌は、真っ黒です。日本人である私の勝手な思い込みかもしれませんが、いずれの年代であっても、群れるということはなく、海や空という大自然からの攻撃に独りで耐えながら飛び込んでいく特攻隊に似た勇気とともに悲壮感さえ感じます。
ラホヤで出会った老人の多くが、裕福で、好奇心旺盛で活動的でした。おそらく、古き良き時代のアメリカ人なのだと思いますが、日本に戻って、つくづく文化が違いすぎることを実感しました。個人として自立することを子供のころから厳しくしつけられたアメリカ人には、誰にも頼るという発想はなく、そのためには真剣に若返ろうという強い意志が生まれるのだろう感じます。アンチ・エイジングという西海岸文化が隆盛を極めるはずです。しかし、30年経って、日本文化も変貌を遂げ、真剣に老化を克服する努力を惜しまぬ人たちが現れてきたように思います。