2013年12月29日
イキ・イキ・エイジング 【第六回 弱い存在の男性・定年後へ対策早めに】 後藤 眞
現在、日本の労働者の大部分は、都市生活をするサラリーマンです。
シェークスピアは、弱いのは女だと断言していますが、それは、大間違い。男は生まれながらに虚弱で、思春期までに生きながらえることの少ない悲しい存在です。
そのため神様は毎年生まれてくる赤ん坊の男女比を男性が少しだけ多く、思春期にはほぼ男女平等となるように微調節しているのです。また、いついかなる社会でも、男性の寿命は、女性より10年も短いのです。
冬山の遭難や海難事故で助かるのは決まって女性です。Y染色体は男性の証しですが、そのためではないでしょうが、男性はわい(Y)せつ行為で誤認逮捕されることもあり、これまた悲しい刻印です。寅さんではありませんが、まことに「男はつらいよ」です。
女性の老化は更年期であらわになりますが、男性の老いは、定年で明確に現れます。人間と書きますので、人はすべて「人の間」で生きてこそ人間です。
地域社会や家庭で生きる女性と違って、組織で生きている男性は、足場となる勤務場所が失われれば、海を漂うクラゲと同じように心が漂い始めます。
ある程度の地位まで勤め、資産があり、のんびり旅行や趣味などで時間をつぶせるとしても、肩事のない生活は耐えられません。権力や資産が価値だと漠然と思い込んできたために、無価値な人間だと自ら卑下するようになり、気弱な時間をつぶすようになります。
生きていれば、あちこち体調も精神も、何かと故障が出ますが、年のせいにして無視する、あるいは諦めるようになります。こうして老いは後戻りできないように蓄積されます。しかし、こうした男性でも、地域社会で役割を得ると見事に生き生きと再生することがあります。
農・漁業、医師、弁護士は、ある意味、自営業の職人で、日常的な対応や技術の保持習得に忙しく、また比較的定年制からはみ出していますので、老化が遅いように思われます。
定年後も働きたい人が働けば、年金・医療・介護制度の破綻を防ぐことができるかもしれません。泥縄式の生きがいや趣味がどれほどの効力を発揮するでしょうか?
他人からの指摘か、ショック療法で、やっと行動するのが人間ですが、年を取って何が悪いのかと居直りなどせず、かくも長き「老後」には何事も早めの対策が役に立つと思います。