2014年1月10日
イキ・イキ・エイジング 【第九回 長寿者の教えは?】 後藤 眞
現在、日本には百寿者(100歳以上の長寿者)が5万4千人を超えています。喪中のあいさつ状にも「母が102歳で」という文面が珍しくありません。たまに80歳とあれば「まだお若いのに」と感じてしまいます。
団塊世代が生まれたころの平均寿命は、50歳にも届きませんでした。仕事と人生の定年が一度にやってきて、老後と余生は人生のぜいたくな贈り物だった時代です。
昔の60歳は本当に老人で、白髪で腰の曲がった、よぼよぼのじいさん、ばあさんでした。
現在の老人の定義は65歳ですが、今どきの65歳は私の子ども時代であれば40歳の壮年期で、最も充実した時期でしょう。こうした人たちを生産から外すことは、取り返しのつかない社会制度の欠陥ではないでしょうか。
長寿者の一族には長生きしている人が多数いるようです。「きんさん・ぎんさん」のご家族も元気な長寿者ぞろいであることはご存じでしょう。
確かに遺伝子の影響は、25%程度はあるとみられています。残りの75%は単に運が良いか、たまたま良い環境だったのかもしれませんが、何か長寿の秘密や共通項を見つけようと遺伝子や生活調査がされています。
遺伝子研究ではマスコミ受けを狙って、代謝を良くし、抵抗力を養うような遺伝子であれば、何でも長寿遺伝子に祭り上げられます。
長寿者は、温厚で協調性のある前向きな性格、粗食の上、畑仕事などで体を使う規則正しい生活を送ってきたと判で押したような優等生的な結果が報告されます。
しかし、どの調査も研究者の思い込み、そうあってほしいという願望に左右されているようです。
100歳にでもなれば、記憶もいいかげんでしょうし、個々の生活環境は違い過ぎて、共通の調査などできるはずもなく、まとまった結果となる訳がありません。
長寿者に本当のところをおうかがいしますと、うなぎやステーキ、てんぷらなど脂っこいものが大好きで、野菜嫌いのヘビースモーカーや大酒飲みだったり、いつもくよくよと思い悩む性格だったりします。すぐキレたり、粗暴だったり、あまり好ましくない生活態度の方も少なくありません。
報道される情報は「そうあってほしい」という一般の希望通りの情報ばかりとなっています。そんなわけで、長生きの秘訣は「じたばたしても仕方ない」と考え、死ぬまで好きに生きることが、どうも基本のようです。