2014年2月25日
お手盛り介護? 坪田英煕
数日前の朝日新聞に「お手盛り介護横行」という記事があった。
ケアマネジャーが、施設の受け取る介護報酬を多くするために、高齢者本人の希望や症状に関係なく規定一杯のケアプランを作ることがあるというのだ。
記事が伝える事例では、介護を受ける本人は一日中やりたくもないゲームや歌をやらされて疲労困憊。他の施設に移って過剰なサービスがなくなると体調がよくなり、介護度も4から1に改善したという。
介護保険法は、「介護支援専門員(ケアマネジャー)は、その担当する要介護者の人格を尊重し、常にその要介護者の立場に立って、その要介護者に提供されるサービスが特定の種類又は特定の事業者若しくは施設に不当に偏ることのないよう、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない(要旨)」と定めている。
朝日新聞の記事は、そのケアマネジャーの不公正が疑われる事例が横行しているという趣旨のようだが、これには大事な視点が抜け落ちている。
現実の介護の世界では、ケアマネジャーをはじめ施設の経営者、管理者、看護師、介護士、療法士とあらゆる職種のスタッフ、それに行政機関など介護保険制度の運営に従事するほとんどの人が、厳しい条件のもとで高い職業倫理をもって、要介護者に対する支援サービスに献身的に努めている。
その役割の本質には、本人の意志や家族の希望に反してでも最良のプランを作り、嫌がられてもなだめすかしていろいろな療法や訓練を繰り返すということが含まれている。さもないと機能の回復も症状の改善も望めないということだ。
私の周囲にも、厳しいリハビリテーションや訓練を敬遠して機能障害が固定したのではないかという人もいる。好きなこと、楽なことをやっていれば、症状が改善するなどということはない。
介護保険制度と介護施設、そこに働く人たちの高度な職能と献身的なサービスに支えられ、本人が懸命の努力をして、初めても機能が回復し、症状が改善するのだ。
ケアマネジャーの公正性を維持するためにその身分を公務員にするべきだという議論がある。国や自治体の財政事情から、それはなかなか実現しないかも知れないが、ケアマネジャーの皆さんは、公務員でなくとも自らの社会的責務を十分認識し、公正な立場を守ろうと努めている。
僅かな事例をあげつらって介護サービスの実情から目を逸らし、その本質を見失ってはならないと思う。
2月24日 坪 田 英 熙