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2014年3月24日

露寇(ろこう)事件始末(6-11) 荻野鐵人

 当地詰合のことは、外国船から国を守るため勤番を命ぜられたわけであり、明春までの間に異変が起こらぬともかぎらないので、武芸のことは、御給人(藩主から知行を与えられた平侍)一同は大いに精励すべきはもちろんであるが、新たに組に加わった者でも、希望の者は、精々訓練に励むようにと申し渡された。
 長江の者佐藤市右衛門と大鰐村富蔵の病態が日ましに悪化しているので、帰国の上養生したいとの願い出があり、公儀御役人衆へ申達したところ、雪中の帰国は難儀するであろうから、当地において養生するよう仰せ付けられた。
 詰合医者石井隆仙にお尋ねのうえ、公儀衆からも、お薬を下された。
 十一月二十五日(陽暦十二月二十三日)郷夫の者大鰐村富蔵、同二十六日飯詰村善右衛門、同二十九日藤代村権之丈、十二月朔日大組足軽福士長十郎、同五日同役小笠原小太郎、同八日同役藤田伊三郎・御長柄佐藤市右衛門・掃除小人富田村久助の計八人、浮腫病にかかり病死したのでこれを上役へ報告し、足軽目付桜庭又吉ならびに同役の者どもが立ち会いの上、死者の所持品を点検して帳面に記し、目付の者が封印して荷物とし、物置所へ保管した。
 一月中旬から詰合の大部分が浮腫病を患い、三御長屋とも水汲み、飯炊き、薪作りなど雑役の者にさしつかえた。
 止むをえず、役分に関係なく健康な者は働くこととし、郷夫の者あるいは掃除小人、大工や鳶の者どもも飯炊き、水汲み、薪作りに勤めることになった。
 十二月九日から、ほとんどの作業にも差し支えるようになったので、止むを得ず軽症の者も手伝うことになった。
 飯炊き、水汲み、薪作りは、御城附足軽花田源太郎、御持槍葛西善弥・宮川定吉、御長柄三浦勝平、小人の織三郎の五人の当番制となったのだが、さてさて哀れなことになったものである。
 諸手足軽三上熊次郎・角田太左衛門が重態となったので、同役の藤田茂幸が付添い看病することになった。
 十二月十日、郷夫高樋村孫七、大工金三郎病死した。
 病気の諸手足軽角田太左衛門、鳶の嵯峨八、大工兵七の三人が、宗谷へ引越して養生したいとの願いが聞届となり、明後十二日出立したが、命により道中付き添いに御持槍宮川定吉も出発した(定吉は無事帰国できたがその他の者は宗谷への途中の紋別で病死した。紋別には公儀の会所がある)。
 十二月十三日、武芸稽古の検分を十六日に日延べすると達せられた。


  • 共立荻野病院             院長 荻野鐵人
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