2014年3月19日
ゴルフの効用 大平 忠
私の中学の友人に体重50kgあるかないか、たいへん痩せている友人が二人いる。二人ともゴルフが好きでときどき一緒にプレーをする。一人は胃を全部摘出したという。もう一人は片腕がうまく動かない男で、何故痩せているのかは分からない。その二人が同じことを言うのである。
ゴルフが少しでもうまくなろうと、あるいは下手にならないためにゴルフの練習場へよく行く。ただの散歩だと歩く気がしないが、ゴルフの練習所へ行くとなると往復歩くのが苦にならないのだという。腕前は痩せた方は滅法うまく80ちょっとで廻る。そんなに飛ばないが真っすぐしかいかない。もう一人は、スコアは気にせずひょうひょうと歩く。しかし、プレーが遅くて他人に迷惑をかけることはない。二人とも、日頃歩いているお蔭だとプレーするのがいかにも楽しそうである。
この二人の友人を見てから、ゴルフをもう止めてしまった友人たちに言うことにしている科白がある。
「クラブが持てて歩ければゴルフはやれる」
あまり私が言うのがうるさいのか、復活した男が二人出てきたのは愉快だった。
そうはいっても、身体の故障でプレーできない友人が少しずつ増えてきた。そこで、最近は若い連中にもこんなことを言っている。
「ゴルフは面白い。プレーができなくなっても、見るゴルフ、読むゴルフが残っている、一生楽しめる」
そうしたら、80才を過ぎたある先輩がこんなことを言った。
「自分はプレーができなくなってから、昔の友人たちとのプレーを思い出してはエッセイを書いている。自分史がいつのまにかできる」と。
なるほど、ゴルフの楽しみ方は広く深いと感じ入った次第であった。
大平 忠