2014年4月17日
露寇(ろこう)事件始末(6-31) 荻野鐵人
野菜は乾燥したもの、特に切干大根は良い。その他は豆類である.しかしそれでも1日に4OOgとなると摂取するのも大変だが、100人分では約4kg、250日分としても約1トンとなる。ビタミンのことを考えただけでもこれだけの副食物が必要である。ビタミンB1は肝臓や筋肉内に貯蔵されるが約5~6週間でなくなってしまう。実際に動物実験でも証明されている。B1欠乏食を与えた人体実験でも、早ければ1カ月、遅くとも2~3カ月で症状があらわれる。
斜里で最初に症状を訴えたのは、大鰐村の富蔵で10月7日である。生魚を9月に食べているようだが、その時から数えても約1ヶ月経っていることになる。郷夫の富蔵は寒さに対して条件の最も良くない住居であったし、筋肉労働も相当激しかったであろうし、白米も大食いしたかもしれない。11月25日に死亡しているが、発病から約50日である。精白米の大量摂取のため糖代謝が亢進し、ビタミンB1の相対的不足も重なっていた。肉体労働で運動負荷がかかったことで、ビタミンB1の消費量が増大していた。酒も飲んでいたとしたらさらにビタミンB1は不足した。寒冷もビタミンB1を消費させた。
2)ビタミンB2(肝臓、卵、牛乳、緑葉菜、海苔、椎茸、どじょうに含まれる)
青森県津軽地方に発生した「シビガッチャキ症」はビタミンB2欠乏、ニコチン酸欠乏、タンパク質欠乏などの合併が原因とされており、脂漏性皮膚炎(鼻翼、耳朶)と肛門・陰部の皮膚炎を伴う。
3)ビタミンB6(肝、肉類、牛乳、酵母、豆類、野菜に含まれる)
欠乏症状; 動脈硬化、老化、脂漏性皮膚炎、口内炎、口角炎、舌炎、貧血、浮腫、末梢神経炎、痙攣
ヒトでは腸内細菌がビタミンB6を合成し、吸収するため、欠乏症は一般には起こりにくい。
4)ナイアシン(ニコチン酸)(肝、酵母、米胚芽、米糠、落花生に含まれる)
欠乏症状; 顔面、脛部、前腕、手背、足背などの日光に暴露した部分の皮膚発赤、水庖、赤褐色の色素沈着、肥厚、亀裂、潰瘍などのペラグラ性皮膚炎が現れる。さらに、口唇炎、口角炎、咽頭炎、舌炎(舌の発赤、腫脹、萎縮など)唾液腺腫大、唾液分泌亢進、悪心・嘔吐、無酸症、消化不良、慢性下痢、血便などの消化器症状が出現し、ついには頭痛、めまい、倦怠感、不眠、集中力低下、記憶力低下をきたし、重症になると、嗜民、幻覚、錯乱、痴呆状態に陥り、さらに発狂し、精神分裂状態に達する。また下肢の知覚鈍麻または麻痺を伴うこともある。