2014年5月18日
イキ・イキ・エイジング 【第二十一回 冥土までの暇つぶし】 後藤 眞
不幸にも事故や病気で早死にするとしても、他の生物に比べれば、人の寿命は短くはありません。ましてや、うまく立ち回れば、無限とは言いませんが、人の寿命は、かなりな長さになります。
一方、われわれがよく知っている歴史上の偉人の多くは、老年どころか、中年期さえ知ることはありませんでした。
人生は事故や病気などの不慮の災難の連続で、周囲を見回すと、どううまくかわしたとしても、40歳まで生き延びることはないという覚悟が、骨の髄まで染み込んでいたのだと思います。
だからこそ、何かやろうと心に決めた偉人たちは、寝る間も惜しんでひたすら没頭して、短い人生を充実させ、偉業達成したのだと思われます。
ひるがえって、平和で飢える心配もない現代では、どのようにぐうたらに生きていても、人生は80歳近くまであります。
何をあくせくする必要があるんだ、どうせ仕事もないし、日がな一日、メールやゲームで十分忙しい、という若者も少なくありません。
音楽を聴いていれば、ゴロニャンと愛猫が膝に乗っかってくる。ひげを抜いたり、ケーキを頰張ったり、肉球をつまんだりして、あっという間に暗くなります。借りてきたビデオ鑑賞をしながらいつの間にか寝てしまう。
僧侶で小説家、参議院議員でもあった今東光師が、喝破したように、「人生は冥土までの暇つぶし」ですから、本当に「ゆるゆるの生活? それがどうした。文句ある?」です。
何かを成すことが人生を生きる意味ではありませんし、他人に迷惑を掛けることがなければ、どう生きようと勝手ですし、どのように生きることがよいのかなど正答はないだろうと思います。
長さが問題になるのは、河川やヘビや寿命ぐらいですが、河川やヘビの評価に、灌漑面積であったり、太さや毒の有無などが追加されるように、ヒトの寿命も単に長さだけでないように思われます。
健康寿命が延長できれば、落ち着いてしたいこともできます。しかし、自分には、したいことも、することも何もない、という方には、この私でも適当な処方箋を今のところ思いつくことができません。
とにかくやりたいことがあって、どうしても120歳までお願いしたいという方には、最新の医学情報から具体的なヒントについて追加のお話をしたいと考えています。