2014年6月5日
akira's view 入山映ブログ 租特
朝日新聞は2月17日の朝刊一面に「租税特別措置」(所謂「租特」)「既得権化の指摘も」と題する記事を掲載した。租特は296件あり、うち企業向けが61件。そのうちほとんどが20年以上「特別措置」が続き、40年を超えるものが15件もあるという。ガソリンだけ騒いでいるが、実は業界権益保全みたいな中味がこんなに存在するのを忘れてはいませんか、という訳だ。
かつて、政治は男を女に変える以外のことは何でも出来る、と豪語した人がいたが、その典型例を租特に見ることが出来る。戦後の傾斜生産方式以来、いわゆる産業政策と税制は裏腹の関係にあった。面白いことに、傾斜生産方式が石炭と鉄鋼に対する重点的配慮であったのと軌を同じくして、EUの原型も石炭鉄鋼共同体であった。両者共に度し難い官僚王国を構築する礎石になっている。
租特が「例外措置」を何十年も継続しているというのは、何十年前に決定された土木工事、開発行為を、その後客観情勢が激変したにもかかわらず愚直に実行し続ける、というメンタリティと無縁ではあるまい。その一方で、平和構築のための人材育成といった、国家百年の大計ともいうべき事業は単年度事業で、かつその教育訓練機関は公開競争入札で毎年入れ替わるのがタテマエだという。款項目を指定した予算の単年度主義に全くそぐわない種類のニーズが増加していることに鈍感なせいだとしかいいようがない。
税金の浪費と同じで、所詮は自分のハラの痛まないカネであり、かつ最終需要者が何を望んでいるかに無頓着であり、前例尊重と秩序維持を最も尊しとする役所体質による部分が大きい。とはいえ、役人にフリーハンドを与えて、予算執行権のたがを緩めようものなら、それこそ現状に輪をかけた百鬼夜行になるのは明らかだ。本来ならば、ここで政治の出番になる。役人が従うべきルールそのものを時代の要請にそってアップデートしてゆくのだ。機動的な対応を要求する予算の額というのは、そんなに巨大なものではない。十分に度ごとの対応は可能であると考えてよいからだ。
しかし租特を巡る国会論戦を聞いていると、そうした視点は皆無で、役所とグルになって利権を温存しようという政治家ばかり目立つような気がする。(菅さんの古賀さん二階さんについての発言はちょっとフライイングだったが)と、嘆き節を歌っていてもことは始まるまい。その存在が少し見えるようになってきた民間の非営利組織がここは先導役をつとめるものだろう。メディア、野党、そして心ある造反官僚たちと一緒になって、である。
2008年 02月 20日