2014年6月10日
イキ・イキ・エイジング 【第二十四回 ウンコ大研究 腸内細菌を大事に】 後藤 眞
いきなり尾籠なお話で申し訳ありませんが、生きるとは吸って吐いての毎日です。酸素や水、食事を取り入れ、二酸化炭素、尿、便を排せつすることの繰り返しです。飽きもせず、死ぬまで毎日食堂とトイレで同じことを繰り返しています。
外国旅行をしていると、到着2~3日目のウンコの臭いが突然変わることに気がつかれたことがあるかもしれません。面白いことに、ヨーロッパ旅行と東南アジア旅行のウンコでは、色も香りも全く異なります。食べ物が変化するからです。
20世紀後半は遺伝子研究の時代でしたが、21世紀前半は、タンパク質研究が発展し、腸に住み着いて、われわれの活動を助けてくれている腸内細菌の研究が盛んになっています。
プロバイオティクスという言葉をご存じでしょうか。どこかで耳にされたことがあるかもしれません。 体に良い善玉菌と、その細菌による発酵食品のことです。
乳酸菌のヨーグルト、みそ、納豆、漬物などは、胃酸で壊されることなく腸にまで届くプロバイオティクス食品の代表だと思います。乳酸菌ですが、ものすごくたくさん種類があり、また有力候補がいっぱいあって、〝決定打〟の菌種ははっきりしていません。
われわれの腸には、数百種類もの善玉菌、悪玉菌を取り混ぜた腸内細菌が常在菌として存在し、その総数は、何と100兆個以上で、われわれの体を構成する全細胞数90兆個よりも多いそうです。腸内細菌の全重量は1・5㌔㌘にも達します。
最近の解析機器の急速な進歩によって、腸内細菌を一気に解析することが可能になり、善玉菌と悪玉菌の分布いかんによって、多くの病気の発症や治療に関係していることが分かってきました。
また、食生活を改めるだけで急速に腸内細菌の分布が変化し、ウンコの臭いも変わることが分かりました。肉食を続けると、タンパク質の腐った嫌なウンコ臭となり、草食系になりますと、ウンコも草花のような爽やかな香りに変化することが分かります。
しかし、肉食と草食のバランスのとれた食事が一番ウンコらしい色と香りになり、腸内細菌も理想的な分布になるようです。ご自分で生体実験されたらいかがでしょう。
将来的には、中国の薬膳料理のように、食事を工夫することによって、体質改善や若返りの治療に応用できるかもしれません。ウンコだといって侮ってはいけません。