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2014年6月12日

akira's view 入山映ブログ 予算主義(7)

さらに款・項・目で予算を策定してしまうと、先の識字教育と飲み水はおろか、費目相互間、つまり使い道の実態に合わせた調整は不可能と言わないまでも、実質的に出来ないも同然になる。(変えるための膨大な手続き、猿のタマネギ、後に見る稟議システム)折角NGOというしなやかな組織を活用しようと思っていても、手足を縛ってボクシングのリングに上げたようなもので、力がほとんど発揮できない羽目に陥る。

最後の領収証は、一見当然だと思われるかもしれない。政治資金だって一円から領収書を要求している。あの信頼できる国会議員だってそうなのだから、どこの誰とも知れないNGOにそれを要求するのは当たり前ではないか。
事実はそうではないのだ。途上国での援助活動に携わったことのある人なら誰でも知っているが、現地での通貨交換から始まって、資材やサービスの購入に当たっては、とても相手に領収書を発行させる訳にはゆかないケースが頻発する。ヤミ相場での売買(圧倒的に有利)、公式ルートでは調達不可能な資材、個人別に異なる(従ってお互いにナイショにしておかねばならない)人件費単価、支出相手が文字や数字が解らない場合、などなど。そんなときに要求される領収書をNGO職員が自ら作成して辻褄を合わせねばならない実態。(制度が作り出すモラル・ハザード)

ちなみに証憑主義のいまひとつの滑稽な副産物が稟議書(もう当用漢字にもなくなったのではないかな)の存在だ。流石に現地NGOにはご縁のない存在だが、資金の出し手の方の上部組織ではどうしてすこぶる健在である。これは要するにあれをしてよいか、これをしてよいか、という「お伺い」に連帯責任の意思表示として(というか、誰の責任か解らないようにする工夫として)、ベタベタと(めくら・差別用語?)判が押される文書のことで、これを机の中に眠らせておく、というのが小役人の最も有力な権力誇示手段であることは良く知られている。権限委譲はしたくなくて、何についても「オレが厭と言ったら」ブッ止めてみせるという格好の機会だから、これも猿のタマネギで、嵩じると切手一枚、電話一回にもお伺いが必要という究極の喜劇が発生する。これに代わってやたら会議を開くというのもあり、小学生が偏微分方程式の教科書採用を議論するような楽しい話も多いが、割愛しょう。

形式的な予算制度ではなく、柔軟な対応を許し、その代わりに事業の成果をかっちりと評価し、支出の細目ではなく目標の達成度でオカネの使われ方をチェックする。そういうシステムが出来ない限り、予算の無駄遣いは永遠になくならないだろう。それも、再度繰り返すが、そういった柔軟な対応が求められるのは、予算支出のほんの一部なのだ。まさに遊びのないハンドルほど使いにくいものはない。

永きにわたった予算主義についての批判的考察をこれでひとまず終わりにしたい。決められたことを決められた通りにおこなう、フィギュア・スケートのコンパルソリーみたいなのも、もちろん美徳である場面もある。しかし、それのみを美徳とすることの愚かさについて述べたつもりなのだが、読者諸子にどこまで意のあるところを伝えることが出来ただろうか。

2008年 03月 22日



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