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2014年6月14日

akira's view 入山映ブログ やらせ

 道路特別会計を巡っては、ほとんど笑い話のような(税金の無駄遣いだ。笑ってばかりもいられないのだが。)あきれ果てたケースが続発し、最初は木で鼻をくくったような答弁を繰り返していた冬柴大臣も、陳謝にこれ努めざるを得ないことになった。これに加えて、治水、港湾整備、空港整備の三特別会計でも大変創意工夫に満ちた税金の使い方が考案されたようである。(朝日3.24夕刊1面)しかし、そんなメディア報道の中でひとつ考えさせられるケースがあった。

 全国から婦人(なぜか「女性」ではなくこの用語が使用されていたのでそのまま使うが)グループが集結。「命の次に大事な」道路の建設を訴えるというTV番組である。そこでは全国からの参加者によるコント風の寸劇あり、大演説あり、婦人グループ全国代表のインタビューあり、という番組だったからご覧になった方も多いと思う。何でもこのイベント自体、国土交通省の下部組織が随契でコンサルタントに委託し、そのコンサルがとあるNPO(特定非営利活動法人)と契約して実施したものだという。数あるグループのうちの一つ、熊本のNPOはこれまでの数年間に1億円の業務委託を国道事務所から「いろいろなかたのご意見を伺うために」受けているのだという。こういうのを普通はお役所の「息のかかった」イベントとか、「お手盛り」の、あるいは「やらせ」の行事という。いつぞやの公聴会のサクラ質問と同じである。

 そんな自明の話に何を考えさせられたかというと、NPOを始めとする民間非営利組織(舌をかみそうな表現だが、わが国ではNPOとか公益法人と同義だと理解されたい)は、自ら会費や寄付を集めたり、さまざまな収益事業を行ったり、金利収入に頼ったりして活動経費をまかなう他に、お役所からのいろいろなサービスについての受託事業、補助事業あるいは助成事業収入というのもかなり重要な収入源だからである。もちろん基本的には、だれが受益者たる納税者により良いサービスを提供できるか、という選択がある。その機能をお役所自身が、あるいは営利企業が果たすよりも、民間非営利組織が最も良く、あるいはより良く果たしうる、ということだ。

 しかし、ことはそんなきれいごとだけでは済まない。受託先の公益法人に多くの役人が天下ったり、「カネを出すなら口も出す」とばかり、お役所が民間非営利組織の自治(最近流行の言葉を使えばガバナンス)にあれこれ口出しする。逆に民の側からも、オカネめあてにお役所にすり寄ったり、御用商人さながらの振る舞いをするものも現れる、というのはよく目に、あるいは耳にするところだ。この道路をめぐる婦人グループも、かぎりなく疑わしい、あるいは本来の主旨に反した税金の使われ方ではないか、と思わせるものがある。

 問題はここからだ。天下りを廃し、御用集団の税金による飼育をなくし、官製NPOを根絶する。それは当然だが、だから「お役所依存のNPOはダメだ」とか「税金を民間非営利組織に遣うのはよくない」という短絡的な結論を導きだすのは、それこそ全ての「公」的なサービスはお役所によってのみ供給できる、という頑迷固陋なお役所万能主義者の思うつぼだ。問題はお役所が税金を遣うスキームそのものであり、使い方の透明性の問題だ。敢えて誤解を招き易い表現を使えば、「正しい」税金の使われ方。「正しい」NPOの見分け方、それは全てだれが、どのように「めきき」(2.23「めきき」参照)をするかにかかる。

 英語の表現に「浴槽のお湯を棄てるのに、中に入っている赤ちゃんごと棄てる」という言い方がある。お役所べったりの垢の浮いているお湯を棄てようと思って、中に入っているまともな民間非営利組織の息の根を止めてはなるまい。

2008年 03月 25日



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