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2014年7月1日

akira's view 入山映ブログ トルコ

 昨年のトルコ総選挙で、エルドハン首相の率いるイスラーム政党・公正発展党(AKP)が地滑り的勝利をおさめて以来、いくつかの問題が発生したものの、それなりに何とか解決の途が見つけられてきた。

 基本的な問題というのは、建国の父・ケマル・アタチュルク以来の世俗主義(secularism・これを世俗主義と訳するのはいささかミスリーディングだが、要するにイスラームの教える政教一致に反対し、その分離を主張する立場だと理解してよい)の伝統と、イスラーミストとの拮抗である。その一端は学校におけるスカーフの着用禁止(イスラームは女性が公衆の面前に出る時頭髪を覆うことを求める)をめぐっての争いに見られたし、ギュル大統領夫人が常にスカーフを身にまとうことが、大統領就任に際しての一つの懸念材料であったこともよく知られている。
この問題をとことん議論し始めると、イスラーム原理主義の問題や、イスラーム国家の民主的正統性の話に発展する。これまでのところ、トルコはイスラーム圏の中で、唯一世俗化を国是にうたい、かつそれを名実共に実行してきた国であることは事実で、世俗主義は広く国民の間に浸透・支持されているのみならず、トルコにおいて大きな存在である軍が、その旗手としての役割を果たしてもいる。

そんなお国柄でなぜイスラーム政党が選挙に大勝したのか、というのも様々な議論を呼ぶのだが、大都市住民と一部インテリ層を除いては、トルコ国民の大多数にとってイスラームは生活の一部であり、原理的な違和感などとは無縁だ、というのが真相に近いと思う。経済政策の成功もあって、これまでのところAKPも世俗主義者も、公然と基本問題を論議して決定的な対立に陥ることは避けて、なんとか風波をたてないようにことを治めてきた。ところが世俗主義の牙城、憲法裁判所がAKPは国是に反して違法であるとして、その解散を命じるとともに、エルドハン首相以下の主要政治家を公職から追放すべしとの決定を下した。この時期になぜ憲法裁判所がそんな行動に出たのかについてはさまざまな憶測があるが、それはともかく、今度ばかりは「なあなあ」では済まされず、ことの推移が注目されている。政党の非合法化はトルコにおいて前例があり、EUもトルコ国内法の問題として不問に付してきた経緯があるだけに、懸案のEU加盟にも大きな影響を及ぼすという側面もある。

この問題は、イスラーム圏の全ての国家にとって、いづれ何らかの形で清算しておかなければならないものであるだけに、世俗化最先端をゆくトルコがどのような解決策を見いだすか、エルドハンの政治力に期待がかけられている。

2008年 04月 17日



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