2014年7月3日
akira's view 入山映ブログ 雇用問題
少子高齢化に伴って、生きのよい労働力が不足する。外国人労働力の活用を真剣に検討すべきだ、という議論がある一方、若年労働力の非・正規労働に携わる率が上昇している。やれ、ニートだフリーターだ、というのは社会問題だと喧しい。かと思えば働き過ぎでワーク・ライフ・バランスがとれていないのが日本の病理だとも。一方で働きたがっている高齢者に職場がない。高学歴女性労働者市場のM字型現象は問題だ、という。
一見すると相互に矛盾しているかに見えるこれらの事象も、労働力一般の話として捉えるから自己撞着のように見えるが、労働の質に応じていくつかのセグメントに分けて見てみれば決してそんなことはない、という論者がいれば、いや、全てはこれまでの雇用慣行、労働市場のあり方に問題があるので、旧態依然たる雇用感覚に留まる限り、問題はますます拡大する、という意見もある。
上記の幾つかの現象は、需要と供給のミスマッチを、ミスマッチの現象面に着目してこんな例もある、あんな例もある、といっているのは明らかだ。一体、これらの事象あるいは問題点の背後にはなんらか共通の原因が存在しているのだろうか。それが旧態依然たる雇用感覚に収斂するのだろうか。答は簡単で、それらいくつかの指摘相互間に因果関係を認めることは出来ない。のみならず、仮に部分的な因果関係が存在しているとしても、その指摘が問題解決の具体策に結びつくことはほぼ期待できない、ということだ。
評論家諸氏のメシのタネとしてはなかなか魅力的なコメントだが、仮に旧態依然たる雇用感覚が高学歴女子労働者の再就職を阻んでいるのが事実だとしよう。だからどうかといえば、個別具体的な対策によらざるを得ず、旧態依然たる経営者の意識改革というのも結構だが、それこそチョー長期的な話になる。
早い話が、子供を作ろうにも産科医が不足。作った子供を安心して預ける場所が質量ともに不足。知恵を出して対応しようにも省庁間の縄張り意識で実現困難。そんな中でこの種のごもっともな評論は官庁施策の乏しさと、何よりも現場からの遊離に対する目くらましに過ぎない。教育訓練給付金なるもののほとんどが、ちゃっかりOLの塾通いのお助けに終わっていたり、ハローワークとかいう役所がニートやフリーターはおろか、高齢者や女性再就職者を採用したことがあるとは聞かない。要するに施策がおざなりで、実が入っていないのだ。
だから、こういう総論にだまされず、具体的にどこで、何が、どんな風に求められているのかを特定して実現してゆかなくてはならない。われわれの困難さや不具合は、役人や評論家のメシのタネのためにあるのではない。「こんなことに使うくらいなら、こちらに」というのがあれば、なお良い。
2008年 04月 21日