2014年7月7日
akira's view 入山映ブログ ミャンマー(4)
ミャンマーについてはこれまで3回(3月3・4・5日)にわたってこのブログで取り上げた。20年以上ミャンマーの国政をとりしきってきた軍政(SPDC)が、重い腰を上げて憲法草案なるものを公表したのはご承知の通りだ。この草案に対する国民投票は5月に予定されている。最近は目を覆わんばかりの愚劣さを丸出しにしている軍政が、15年にわたらんとする「検討過程」を経て、とにもかくにもこの行動に出たのは、やはり国際世論なるものの圧力が多少はあったのだろう。ところがこの草案がすこぶる評判が悪い。スー・チー女史のNLDは早々とボイコットを呼びかけている他、欧州からも、近隣アジア諸国からも非難囂々で、こんなものを認めるなという論調がメディアでも支配的だ。
たしかに、いかにも軍政が考えつきそうな自己権力温存策が無数にちりばめられた草案で、非難の集中している主な点を上げただけでも、(1)軍政がお手盛りで選出できる議員が25%(つまり民選議員は75%)(2)この憲法改正には75%以上の議員の賛成が必要(3)外国の影響下にある人(婚姻関係を含む)には参政権なし(スー・チーさんの亡きご主人はイギリス人)(4)国家元首には軍事知識を求める、などなど。こんなものを軍政が組織した大政翼賛会的なUSDA(有権者の90%が党員だというからすごい)のもとで国民投票にかけたら、(表面上の)ミャンマー民主化はかえって害悪でしかない、という訳だ。
しかし、ボイコットしてみて軍政が崩壊する可能性があるのか。米国を中心にいわゆる経済制裁強化論が軍政に対する圧力としてよく論じられる。経済制裁というのは、新規投資禁止に始まって、貿易制限、資産凍結、査証発行制限、もちろん友好国や国際機関によるODAの停止に向けての圧力などのことをいうのだが、これが意図しているほど効果がない。お近くの北朝鮮の例をみても解るように、多少おたおたしたのは将軍様の口座が凍結されて外貨が使えなくなったときくらい。それ以外は密貿易やらマネー・ローンダリングで権力者は一向に困らないしかけになっている。困るのは一般の国民だけ、という構図だ。
ミャンマーも全く同じで、軍幹部の関与している天然資源を中心とした企業は、経済制裁などどこ吹く風。それもそのはず、中国・タイをはじめとした国境貿易やら、ガス田開発は全くしり抜けになっていて、将軍たちが懐を肥やす上では何の痛痒も感じていない。痛手を被るのは対米輸出で食べていた繊維産業など、一般市民だけ、ということになっている。
だから、という訳ではないが、この憲法をボイコットしないで、スー・チーさんはぜひ土俵に上がって欲しいと思う。国会議員になんぞなれなくたって(現に彼女は一度も選挙で選ばれたことはない)、国家元首になれなくたって、彼女の存在が無視できる訳がない。たとえ全議席の75%であっても、議員選挙にNLDが圧勝することがまず「民主化」の第一歩だ。
2008年 04月 26日