2014年7月22日
イキ・イキ・エイジング 【第二十八回 不整脈はとても大切!?】 後藤 眞
世の奥様方、お許しください。若い女性とのたまのデートで、胸が早鐘を打つようにドキドキすることがあります。こうした嬉しい場面(ごめんなさい)でなければ、胸が苦しい、脈が乱れる。不整脈?と疑えば、大あわてて循環器科を受診したり、救急車を要請したりするかもしれません。
落ち着いてください。あわてて躓いて転倒するほうが怖いですよ。心臓の拍動によって血液が身体の隅々にまで動脈を通って運ばれます。血液がどくどくと送り込まれる拍動と、血管が腸の蠕動のように波打つ拍動が合わさって脈拍として手首や鼠径部や頸動脈で触れることが出来ます。この拍動が不規則になったり、異常に早くなったり遅くなったり、場合によっては、飛んだりすると、不整脈と言います。
不整脈には、無害な不整脈と危険な不整脈があります。また、すべて心臓の異常に原因があるだけではありません。始めてのキスや急勾配の階段を100段も昇ったりすれば、たいていは、ドキドキします。精神的ストレスや運動性のほぼ無害な不整脈です。甲状腺機能が増加するバセドウ病や更年期障害などによるホルモン性の不整脈もあります。不整脈の程度や種類によっては、緊急の治療が必要になることもあります。
驚かれるかもしれませんが、健康的な生活を営むためには、不整脈は、必要不可欠な現象なのです。われわれは、ホメオスタシス(恒常性維持)と呼ばれる身体をいつもほぼ同じ状態に保つことができるように創られています。しかし、物理工学でも確認されていますが、常に規則正しく生真面目にし、遊びがないと、ものすごいエネルギーと緊張感が要求され、疲労やストレスがたまります。ある研究で、無害な不整脈の少ないヒトと多いヒトを比べますと、不整脈がほとんどないヒトほど、心臓に強いストレスがかかり、そのストレスを一気に解放するために、危険な不整脈による突然死の危険性が高くなることが知られるようになりました。そのために、無害な不整脈という手段で、ストレスを減らしていきます。生体の巧妙な智慧だと思いますが、何ごとにせよ、この遊びという、いい加減さが、健康的な、必要な不整脈です。心臓は、一日に、10~15万回拍動し、無害な不整脈が数百回発生します。これらは、健康上大切な不整脈なので、なんでも直せば良いというモノではないのです。四角四面な生活が、あるいは一番危険かもしれません。