2014年7月30日
イキ・イキ・エイジング 【第二十九回 バラバラな血圧測定値】 後藤 眞
血圧は高齢者ばかりでなく、中高年の話題の中心です。昨今は医学研究データ解析の改ざんというディオバン事件があり、血圧への関心がさらに高まっています。
病院やクリニックの待合室には必ず自動血圧計が鎮座し、来院される多くの患者さんは、磁石に吸い寄せられるごとく、受付を済ますと必ず血圧を測定します。
寒い朝など、厚手のコートのまま腕を無理やり差し込んで測定する方や、申し訳程度に腕を差し入れて、とても正しい測定ができるとは思われないようなことをされています。大抵は上が250、下が120とか、ものすごい高血圧表示でプリントされます。うかつな医師は、そのままカルテに高血圧と記載し、慌てて降圧剤を処方します。
血圧は、心臓の拍動によって動脈へ排出される血液が血管の壁に沿って流れる時に起きる渦巻きと、動脈の壁の硬さ(動脈硬化)を測定していると考えられています。
心臓は常に拍動しているわけですから、体温が毎日変化するように、毎秒ごとに血圧は変動します。そのため、血圧は100回測定すれば100回とも全く異なる値となり、収縮期血圧(いわゆる上の血圧)が、何回測定しても、バラバラになることが普通です。また、血圧は日内変動といって、1日のうちでも大きく変化します。
どれが正しい血圧かと言われれば、すべてが正しいのですが、それでは困るので、便宜的に3回測定した平均値を血圧として記録します。また、1日のうちで、最も血圧が高い起床時と最も低くなる就寝前を参考にすることが多いようです。
ですから、許されることではありませんが、医学研究で測定した値をごまかしたからと言って、さほど事実をねじ曲げている訳ではないのです。
おまえはインチキを弁護するつもりかと突っ込まれそうですが、検査値とはその程度のものなのだと言うことを知っていただきたいだけです。
血圧の正しい測定は、自宅の静かな部屋で、部屋の温度をほどよく保ち、深呼吸を数回行った後、上半身裸になって肘と肩のほぼ中間の筋肉部分にマンシェット(腕に巻き付けるバンド)をきつすぎないように、緩すぎないように、ぴっちりと巻き、3回測定し、その平均値を出します。
ほとんどの方は、病院や医師の前では激しく緊張し、確実に血圧は上がります。こうして、高血圧の診断は、確実に増加します