2014年8月6日
イキ・イキ・エイジング 【第三十回(最終回) プラセボ効果と血圧】 後藤 眞
ヒトは感情の動物だと言われています。また、医者は高学歴、高収入(ウソです)の権威者ということでよほど信頼されているようです。
昨今の不祥事の連続で、以前ほどではありませんが、どんなに豪胆だと思われているツワモノでも、白衣の医者を前にしてビビらない方にお会いしたことがありません。
本当は患者さんをビビらせるのは、まだヤブの証で褒められたことではありませんが、ビビる患者心理をうまく操って治療を成功に導く技術をモノにすることも名医への道です。
昔から、こうした患者心理に寄り添ったプラセボ(偽薬)効果といわれる医療の力強い作用が知られています。ヤブでもあまり問題が表面化しないのは、こうした歴史的に紡がれてきた絶大的なプラセボ効果のおかげです。
まだ誰も試算したことがありませんが、絶大なプラセボ効果が失われますと、莫大な医療費と、医療訴訟の急増は必至です。ひょっとすると、社会の破滅を招くかもしれません。
ところで、血圧はちょっとした感情の変化で大きく変動します。緊張すれば、すぐ血圧は上昇しますし、ショックを受ければ低下します。ひどいときには、そのまま意識を失って倒れることもあります。
当然、医者の前に出れば、例外なく、だれでも血圧は、上がります。面白い実験があります。若い研修医の測定で、上が200の血圧が白髪の医者では180、若い看護師で160、ベテラン看護師では、まさかの120になります。
ところが自宅で測定しますと、何と100を切る低血圧と表示されます。聴診器で聞こえる聴力の違いも多少は考慮しなければなりませんが、患者心理はものすごく微妙です。権威と経験への信頼度と不信感、恐怖感の微妙なはざまで血圧も激しく揺れるのです。
同じ医者であっても、白衣を着て測定すると160。脱ぐと140に低下することから、白衣高血圧と呼ばれています。そのため、あえて白衣を着ない医者もいます。
信頼性の高いデータがないのですが、プラセボ効果の真逆の、副作用とでも言える白衣高血圧のために、高血圧の治療をされている患者さんはかなりな数です。
最近、高血圧の基準が、変更されましたが、なるべく低い方がイキ・イキ・エイジングには有効であることは言うまでもありません。今回で最終回になりました。ご愛読ありがとうございました。