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2014年8月8日

akira's view 入山映ブログ ヒラリー・クリントン

 大統領候補がアフリカ系出自のバラク・オバマと女性候補ヒラリー・クリントンによって争われた、というのも歴史的な出来事ならば、事前の予想を裏切ってオバマが大健闘どころか、ついに過半数の代議員を勝ち取ってしまったというのも瞠目に値した。民主党を二分する余りの激戦に、これでマケインが有利になった、という観測さえある。その中での去る7日のヒラリーのconcession speech(敗北を認め、大統領選からの撤退を宣言する演説)であった。

 こんな話題について好き嫌いの議論から始めるのはどうかと思うが、筆者はヒラリーにはどうしても好感を持てなかった。多分、彼女の言説に誠実さを感じられなかったというひどくいい加減な理由もあったし、クリントン前大統領の無定見なアジア政策に感心していなかったから、そのブレーンを引き継いだヒラリーに危惧を覚えたという点もあったかもしれない。しかし、彼女のあのスピーチにはしびれた。これほど潔く、格調の高い敗北宣言をなしうるアメリカの政治風土には羨望の念を禁じ得ない、といってもよい。巧言令色鮮きかな仁、という風土ではありえないことかもしれない。

 「公務に携わるということは、人々が困難な問題を解決し、その夢を叶えることを手助けする、ということだ」という彼女の言明には、当然のことはいえ、とりわけ新鮮な感動を覚えた。「そんなことは不可能だ」という言葉を斥け、可能性の限界を拡大してゆくというのがこの国のあり方(American way)なのだ、といい、「れば、たら」と後ろを向いて無駄な時間を費やすのはやめよう。前向きに進もうという。

 女性として大統領選に参加することを誇りに思っているが、それよりも、自分が最も適任だと思うから立候補したのだという。女性に対する障壁がいまだ存在することを認めつつも、必ずやそれは除去されるだろうとも述べた。30分にわたる彼女のスピーチにちりばめられているこうした「さわり」を一々紹介するつもりはないが、けれん味なくこうした主張を真正面から語る、というのはいまだアメリカの政治が持つ美点だろう。

 社会保険制度、具体例を挙げての偏見と差別の廃絶、そして意欲ある国民に対する可能性実現の保証、イラクからの撤兵といった土台とすべき政策についての言及と共に、哲学の共有に向けての努力とでもいうのだろうか、こうした機会が余りにわが国には乏しいように思われてならなかった。彼女の美辞麗句に酔わされた、ということではなく、国民、選挙民に「参加」の意識を持たせる、という民主主義の原点を改めて感じさせられたことだった。

 蛇足ながら検索エンジンでHillary Clinton, concession speechから映像、テキスト共に見ることができます。ぜひ一読をお勧めします。

2008年 06月 12日



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