2014年8月17日
akira's view 入山映ブログ 居酒屋タクシー
バブル華やかなりし頃、夜遅くなってタクシーを拾おうと思って手を上げても全く止まらない。所謂「乗車拒否」で。法外な料金を吹っかける「雲助」や、相乗りを強要した挙句全員からメーター料金を取る、などということが頻発したのを覚えていらっしゃる読者も多いだろう。
それかあらぬか、繁華街では「流し」を禁止して、一定の場所でしか客を乗せてはいけないことにし、並んだ順に必ず乗せる、というシステムが出来る。(これが客がいなくて青息吐息の今日この頃も依然行われている、というのも面白い。)
景気が良くなればタクシーが増えて、景気が悪くなれば台数が減る、という経済原則に基づいた需要供給の調整が起こればこんなことにはならない筈なのだ(ちなみに、料金にだってそれが起こっても不思議はない)が、これがそうもゆかない。一つには国土交通省がタクシーの台数と料金の規制を行っているからだし、景気が悪くなった時に限ってタクシー運転手のなり手が増える、という事情もあるようだ。
とまれ、規制大好きな国土交通省の行政であってみれば、対策がタイミングの良かろう筈もなく、後手後手に回っているのは人も知るとおりである。ついこの間まで東京のタクシーというタクシーが全部メーターを二つ付けていたのをご記憶の方も多いだろう。外国人の友人に「あれが何だ」と質問されて返答に窮したのを覚えている。何でも深夜割増料金と障害者割引運賃の計算用だったそうだが、あのメーターを製造している会社が日本に何社しかなくて、メーター一基がいくらで、そこにどれほどのお役人が天下っているか、ご存知の方がいたらぜひ教えていただきたい。(割り増し運賃の計算は秋葉原辺りで一台数百円で売っている電卓で十分出来るし、そんな機能をメーターに付加するのも難しいことではない筈だ。)
話が横道にそれたが、今度の居酒屋タクシー問題もこれと無縁ではない。タクシーの運転手がお得意さんにいささかの付け届けをする、というのはない話ではない。ご近所の個人タクシーを電話で呼んだら、乗ってから始めてメーターを倒した(迎車のメーターは倒していなかった)なんていうのに目くじらを立てることはあるまい。ましてそのついでに田舎から届いたトウモロコシを一本お裾分けに与ったとて、大騒ぎする話ではない。
それと、ポケットマネーでタクシーに乗るのと、税金でそれを払ってもらっているのを忘れた、という公私混同みたいな話は論外だというのとは全く別なのだが、話の推移を見ていると、規制緩和によってタクシー台数が増え、それで運転手の収入が減る、労働強化になる、それが諸悪の根源だ、みたいな方向に議論を展開しそうだからである。そうではなくて、タクシーの料金・台数の規制のあり方そのものを一度議論してみた方がよい。安全でサービスの良いタクシーは誰しもの歓迎するところだ。それを実現するのには台数と料金を規制するしかない、という硬直した発想にはそろそろお引き取りいただいてよいのではないか。
2008年 06月 26日