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2014年9月24日

akira's view 入山映ブログ ペーリン

 共和党大会に先駆けてマッケインが副大統領候補を指名した時、アメリカの反応は一様に「ペイリンって誰?」(Palin, who?)ペイリンなのかポリンなのかも判然としない、という訳だ。とりあえず受諾の演説は無難にこなし、ヒラリーへの一通りの讃辞も怠らなかったことから、どうやら民主党のヒラリー票を中心に女性支持を当て込んでいるのでは、という観測が浮上した。アラスカっ子でミスコンテストを経てアナウンサー、名も知らぬ町の市長からアラスカ知事になった、という経歴が知られるようになるにつれ、「おいおい、共和党に人もいるだろうに、なぜ全ての意味で経験の乏しい彼女が?」というコメントが増えてきたのは理の当然だろう。

 その前後たまたま在米し、テレビしかない山の中にいたから、あるいは情報が偏っているかもしれないが、さまざまな否定的な反応にも関らず、デビュー後の数週間は関心をかっさらった、という意味でパブリシティとしては大成功であったと見て良い。マスコミ好きの政治家の多いアメリカにしては珍しく、彼女は副大統領候補受諾後二週間、あらゆるマスコミの取材はおろか、聴衆との一問一答さえ行っていない。余りの国際知識の欠如に大慌てで詰め込み教育をしているのだ、とか、いや、これも巧みなマスコミ演出の手法だ、とか噂は様々で、満を持した(?)テレビ出演が全米ネットの一つABCの人気アンカーマン、チャールズ・ギブソンとのインタビューだった。これはネット上でご覧になれる(例えばhttp://video.taggy.jp/detail/180214810)から、内容評価は読者の皆様にお任せするのがよいだろう。

 彼女の演説は善かれ悪しかれ、女性で、主婦で、母親で、というのが前面に出る。庶民派を強調したいせいか、演説の格調とか、深みに配慮した原稿は使っていないようだ。hockey mom(子供のホッケーゲームを送り迎えする母親。自分もその一人だと明言する。)と pit bull(闘犬である。勇猛果敢に戦う、という含意があるのだろう。)の違いは口紅を付けているかどうかだけだ、といって大向こうから拍手を取ったのはその一例である。日本人には余り解り易くない地口だが、アメリカ人の友人に聞いても、ま、そんな程度のことだろうという。これが有名になったのは、よせば良いのにオバマがこれに引っ掛けて。「口紅を付けてみてもブタがブタであることに変わりはない」とやったからで、いささかならず大統領選の品格を落としたきらいなしとしない。

 それはともかく、この人選は筆者には理解の域を超えた。特に国際感覚、あるいは国内問題を超えた視野というものが全く感じられないところには、空恐ろしささえ覚える。マケインにことあったときに、米軍総指揮官がこの人か、という思いだといっても良い。ナイーブさは美徳でありうる。(グルジア問題に関連して、ロシア観を問われて曰く、アラスカ州にいる私は日夜ロシアと対峙しています!)しかし危険さとも紙一重だ。そんなことは承知の上で、あるいはインテリ層に対してマケインは公然と挑み、口舌の徒は関知するところではない、というメッセージが含ませようとしのかもしれない。洋の東西を問わず、選挙に勝つ、というのはことの本質とは別に技術としての側面を持つ。さて、日本の来るべき衆議院議員選挙はどうだろう。

2008年 09月 18日



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