2014年9月30日
akira's view 入山映ブログ 小泉引退
小泉純一郎氏が政界引退を表明した。三代・五年五ヶ月に亘る総理大臣在任の期間を通じて、彼が日本政治に残した足跡は大きい。その極めてドラスティックな政治手法、あるいは業績に対する評価は毀誉褒貶を含め様々であるが、それらを紹介するのはこのブログの本旨ではない。筆者の見る小泉政治の歴史的意義を再確認しておきたい。
彼の最大の功績は官邸主導型政治を実現したことだと思う。官僚主導、あるいはいうとことの鉄のトライアングルに対する批判は決して事新しいものではないが、彼は現実に官邸、すなわち首相の唱道する政策を最低限の妥協で実現した。その結果、これまでは足して二で割ったり、三で割ったりして本来の色彩が薄められ、事実上官僚の引く糸に操られていた自民党政治が大きく変化したことは特筆に値しよう。その典型例が郵政民有化であった。再びその評価を巡っての様々な意見を紹介することはしない。が、プライマリーバランスの回復を政治アジェンダの中心に位置づけ、その象徴的手段として公共事業削減、その原資としての郵貯を干し上げようとした手法は強烈であった。いうところの小泉改革とは、利益誘導とその走狗としての官僚制レジームに対する真っ向からの挑戦であったことは記憶されてよい。
おそらくは彼の路線を継承すると考えたであろう安倍政権が無惨に野垂死にしてからは、彼の現実政治に対する意欲は消え失せたように見える。今回の総裁選にあっても、彼が本気で小池総裁の実現に意欲的であったとは考えにくい。先にも述べた(9.23「自民党総裁選」)ように、自民党が本当に危機感を持っていればそれが最善の選択であったであろうにもかかわらず、である。格差是正、改革の陰の部分といった美名に隠れたバラマキの復活と旧利権構造の復活に、早々と見切りをつけた、と考える方が当を得ているように思われてならない。劇場型政治は主役を欠いては再現の術もない。残された83名の所謂チルドレンが、次回選挙でどれほど生き残るか、またそのうちどれほどの人々が彼の路線を継承するかは未知数である。小泉カリスマの下でしか生存できないひ弱な政治家であるのならば、しょせん徒花に過ぎないことは彼自身が一番知悉していたように思う。
それよりも、彼が後継者として二男を指名したことには失望を覚えた。彼自身が「世襲」政治家であったことを割り引いて考えても、晩節を全うするについては惜しまれてならない。小沢氏が本気でお国替えなどという愚行を考えておいでならば、ぜひ神奈川11区を選ばれることをお勧めしたい。
2008年 09月 26日