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2014年10月18日

高遠そば-4-2 荻野鐵人

柴家の斗南での飢餓地獄がはじまった。どこの家でも貴重な米はなるべく食べず少しでも売って、それを他の費用にまわした。できるだけ多くのかてを混ぜて、水をたっぷり入れうすい粥に炊く。それだけが三度三度の食事である。かてによく使われたのは大豆、ときには馬鈴薯だった。しかし、いちばんよく使われたのはおしめだった。おしめとは、海岸に打ちあげられた昆布・わかめその他雑多な海草を乾し、砕いて木屑のようにしたものである。天明の大飢謹で多くの人民が飢え死にしたとき、この地方のしめという女が発明したと伝えられる救荒食糧で、以来南部領では常用されていた。水に侵すと容積は10倍くらいにふくれる。色は茶褐色でプーンと気持ちのわるい臭気をともなう。どちらかといえばこのおしめが主で、米のぱらぱらと浮いたお粥を口に運ぶと臭く、喉を通すのもやっとだった。
ある夜、誤って射殺され氷の上に放置されていた犬の死骸を手に入れ水煮にした。はじめて口に運んだときには、その脂の乗った美味さに舌鼓を打った。忽ちに身体じゅうに栄養がひろがり沁みわたるようだった。・・・ところが、来る日も来る日も犬の肉ばかりとなると、たちまち鼻につくようになった。20日間も過ぎるようになると、目をつむってかぶりつき懸命に噛みはじめるのだが、肉はたちまちゴムのように口中でふくれ喉に引っ掛かってどうしても嚥(の)みこむことができなかった。「会津武士の子たることを忘れしか。戦場にあって兵糧なければ、縦い犬猫なりとも是を喰らい戦うものぞ。会津の乞食藩士ども下北に餓死し絶えたるよと、薩長の下郎どもに笑わるるは後の世までの恥辱なり。ここは戦場なるぞ、生き抜け生きて残れ。会津の国辱雪(そそ)ぐまで生きてあれ」五郎は父に厳しく叱責された。



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