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2014年10月19日

akira's view 入山映ブログ 朝日新聞

 これまでにも遠回しな表現で反自民、あるいは民主党支持をことあるごとに表明してきた朝日新聞だが、10月19日「補助線」で辻陽明氏の署名記事「政権交代を読み解く」でその立場を一層明確にしたのが注目される。いわく「しがらみとの「断絶」は政官財のもたれ合い構造を変える。今度の衆院選は「党首力」より、その「断絶」に日本の未来をかけるのか否かが問われる。」と。

 米国大統領選挙でも、オバマあるいはマケイン支持を明確に打ち出した新聞は多い。しかしほとんどの場合、ロサンゼルス・タイムスや、シカゴ・トリビューンに代表されるように、本紙はこれこれの理由でオバマを支持します、とはっきりしている。「政官財のもたれあい構造」という望ましからざる事態を選ぶのか、選ばないのか、という道学者めいた説教ではないのが違いであると言っても良い。報道の中立とか、不偏不党を看板に掲げつつ実は一方を支持する、というポーズをとらないところが異なっている訳だ。

 メディアが反体制の論調を打ち出す、というのはマスコミの存在理由の一つでもあり、それ自体は批判されるべきことでもなんでもない。しかし、それが当・不当あるいは適・不適のレベルではなく、善悪、あるいは「べき」論の外装をまとっている場合には、読者の読み解き能力(リテラシー)が要求される度合いが強くなる。ことが選択の問題ではなく、正しい選択が存在していて、それを発見できるかどうか読者の能力を問う、というトーンになりがちだからだ。

 ことがらについて無知なくせに、あるいは無知なるが故に、断定的・先験的な論調をとる、というのはよく見られる現象だ。それが権威の衣を装っていないときには内実を見抜くのはさして難しいことではない。しかし、一見客観的な事実のように見えて実はそうでもない、というケースが結構多いからことは厄介になる。説得的であるよりは、説明的である議論が望まれる理由はそこにある。

 政治的キャンペーンは断定的・先験的でなければ迫力に欠ける。是々非々みたいなスローガンに酔う人はいない。だから、共和党はウォール街に癒着して税金を一部特権階級のために使っている、という言説が堂々と語られるし、自民党は政官財もたれ合いの元凶だ、と民主党が言ってもだれも驚かない。しかし、どちらかの政党を支持する、というのは、必ずしもその主張の科学的な正しさを立証する、という行為ではない。減税はします、福祉予算は増やします、というスローガンが可能かどうかを検証する、という作業が政治的な行為か否かはそれが語られる文脈(コンテキスト)による。両者を意図的に混同するのは、政治的行為に他ならない。

2008年 10月 20日



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