2014年11月3日
鳥人間《戸田太郎太夫》-1 荻野鐵人 影山芳郎
ベルツ花子の祖父
子孫の縁である戸田実氏ご夫妻の協力を得て、人力飛行者・戸田太郎太夫の事績を明らかにすると共に、日本と世界の鳥人記録を航空工学より考察する
1.まえがき
一般には、アメリカのライト兄弟が世界で最初に空を飛んだと思われている。しかしライト兄弟は、1903年、自作のガソリン・エンジンを動力とする飛行機を設計製作し、初飛行を行っているのであって、エンジンなしでの飛行(鳥人間)を試みた人々は、実はもっと前にいる。ライト兄弟は、「リリエンタールこそ先駆者のなかで最高の人物だ」と絶賛しているが、1891年にドイツのオットー・リリエンタールは固定翼のグライダーを作り、それに乗って小高い丘から滑空をすることに成功している。彼は、この実験を繰り返し、翼の空力特性やグライダーの釣合い、安定、操縦などの諸問題に関する貴重な知識を残し、その後の飛行機の発展の基礎となり、世界各国の研究に大きな刺激を与えた。
彼より前にもバードマンは何人かいた。中根慶一氏は昭和45年(1970)に「最初の人力飛行者はリリエンタールではなく、御油(豊川)の人だった」と述べている。(実際には岡山の表具師浮田幸吉が先に固定翼のグライダーで飛行している)
著者はこの御油の人の飛行実験のデータに航空工学的解析を試み、記録は信頼性が高く、事実であると確信し得たので報告する。この人力飛行者、戸田太郎太夫は他ならぬベルツ花子の父方の祖父なのである。博士に一笑に付され、悔しい思いをしている花子の墓前に
「あなたのお祖父(じい)さんは世界的な発明家だった」と報告し、日本の近代医学の父であり、大恩人のベルツ博士に、これからは誇り高く、寄り添ってもらいたくて筆をとった。
鳥人間年表
西暦 事柄
1130 修道士エルマー183m飛ぶ
1490 ダ・ビンチ羽ばたき機を設計
1753 平賀源内、竹とんぼを作る
1769 ワット蒸気機関を発明
1778 源内、エレキテルを公表
1781 源内「雲中飛行船」を考案
1783 熱気球、人類初飛行
1786 林子平『海国兵談』気球発表
1787 沖縄の安里周祥、飛ぶ
1789 浮田幸吉のグライダー初飛行
1848 浮田幸吉没.
1849 戸田太郎太夫、藩主御前飛行、ケイリー脚のグライダー飛行
1853 ケイリー新機、153m飛行
1857 ケイリー没
1888 戸田太郎太夫没
1891 リリエンタール、飛行、二宮忠八ゴム動力飛行器飛行
1896 リリエンタール墜死
1903 ライト兄弟ヱンジン機初飛行
1912 斎藤外市初の民間人動力飛行