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2014年11月10日

akira's view 入山映ブログ 民に出来ることは民に(4)

 「官」だ「民」だ、となぜこだわっているか、というのはこのブログをお読み頂いている方には先刻ご承知と拝察するので再説はしない。「官」が何でも悪い訳でもなければ、「民」なら何でもよい訳でもない。要は制度設計も行動原理もまるで違う生き物をつかまえて、なまじ「善かれ」と考えてあれこれいじりまわすのは、愚の骨頂だと言いたい訳だ。中国四千年の歴史は流石で、荘子の中にぴったりの寓話がある。昔「混沌」というのっぺらぼうの名君がいた。その善政に報いようと思って、眼や鼻や口に当たる穴を空けてあげた。混沌は七日のうちに死んでしまった、という話だ。

 「民」が世のため人のための仕事をしようと思えば、浄財が必要になる。それを免税扱い(正確に言うといろいろあるが、簡単に言うとこういうことになる)にすれば、寄付をする方にもインセンティブが働くだろう、ということで、そういう制度を設けることにした。結構な話だ。だからといって、「民」でさえあればだれでも、どんな組織に対する寄付でも免税扱いにするという訳にも参らない。だから、こういう要件を満たした組織に対する寄付に限っては免税扱いにしますよ、という条件設定をしたい。当たり前の話だ。普通の「民」の感覚では、良い仕事をしたかどうか、その実績成果を見た上で、なるほど良い仕事をしていますね、そう言う組織には良いことがあるようにしましょう、というのが当たり前だろう。ところが「官」の論理はそうではない。良い仕事をしますよ、と約束する組織の、その約束の仕方にあれこれ条件を付けて、その小難しい条件を満たしてさえいればいい仕事をする、と認めましょう、という何とも珍妙な論理になる。

 要するに、悪いこと、約束を守らないことがしたくても出来ないような枠組み(ハードル)を作り上げた上で、そのハードルを越えた人だけに甘い水を飲ませよう、という仕掛けだ。悪いことがしようにも出来ないようにした上で、悪いことをしそうだったら引っ括ろう、というのはかの治安維持法の予防検束と同じ発想である。こういう馬鹿げた発想で成立しているのが今回の「公益法人制度改革」だということは余り知られていない。お役人の好き勝手な行動を掣肘する論理としては、これでよいかもしれない。公僕が悪いことがしたくても出来ないようにしておくのは悪い考えではない。(それでも何が起こっているかは、社会保険庁や国土交通省を見ればお解りの通りだ)だが、臨機応変、柔軟さが取り柄の民間組織をこんな理屈で縛ったのでは、両手両足を縛った上でボクサーをリングに上げるようなものだ。

 具体的にひとつだけ馬鹿げた例を挙げよう。「民」で世のため人のための仕事をする組織(従って税金の上で有利な取り計らいを受ける組織)は、収入が支出を超えてはいけない。つまり支出される経費以上の収入を得てはいけないのだという。冗談ではない。本気で法律にそう書いてある。ご希望があれば、こうした馬鹿げた縛りをブログの上でいくつでもお示しするが、要はお役人が「善かれ」と思ってよってたかって混沌に眼や鼻をあけてあげている。混沌は死ぬ他ないではないか。

2008年 11月 17日



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