2014年11月28日
akira's view 入山映ブログ マドフ
バーナード L マドフといえば、ビーチボーイ(海水浴場の便利屋さん)から身を起こし、40年以上もウォール・ストリートに君臨したいわば大物中の大物。その彼がこともあろうにネズミ講(英語ではPonzi schemeというらしい。Ponziは20世紀初頭にこの仕掛けを開発したイタリア系移民の個人名)で4兆5千億円を集めたとしてFBIに逮捕された。1971年に日本でこれまで最大のネズミ講として逮捕された「天下一家の会」主宰者の脱税額が77億円だったのに比べてもそのスケールの違いに驚かされる。ひっかかった被害者は正に死屍累々で、日本では野村HDの275億円が筆頭。三菱UFJも名前を連ねている。世界中の名のある銀行、投資家、大学基金、財団などなどが枕を並べた。HSBCが900億円とか、ユダヤ人のノーベル賞受賞者エリー・ウィーゼル財団、さらには基金が吹っ飛んで活動停止に追い込まれた財団など、それこそ枚挙に暇がない。
集金はさまざまな窓口で行われていたようだが、その一つフェアフィールド・セキュリティ・ファンドは700億円を集めて、年11%の配当をうたっていたという。いくら何でも、という気がしないではないが、おれおれ詐欺に未だに引っかかる人がいるのだから、そんなものといえばそんなものかもしれない。一方、マドフを逮捕したのが泣く子も黙る証券取引委員会(SEC)ではなくてFBIだったことにも米国では議論になっているようだ。なぜこんなあからさまな詐偽を見抜けなかったのか、という訳だ。これまでコンプライアンス(法令遵守)だ、ガバナンス(会社統治)だというとお手本のように思われていた米国モデルも、エンロン事件以来いささか陰っていたのが、先のサブプライムで格付け機関のいい加減さが露呈され、ここへ来てSECよお前もか、という事態に立ち至っている。会社法を始めとして、ビジネス法制の世界では短兵急に米国型に追随を急いできた日本のあり方も、少しは見直す機会かもしれない。
何も今日昨日の話ではなく、悪いやつというのはそれこそ「浜の真砂」であって、それを法規制によって予防しようというのは、もちろん正当なやり方ではあるのだが、万能という訳にはゆかない。こういうときに限って、規制の網の目をもっと密にしなくてはならない、みたいな議論がお役所(とそれに寄生する御用学者(11.25「NIC」))あたりからは出てきそうだ。一人の不心得者を出さないために残りの九十九人が迷惑するのには構っていられない、という論理だ。桑原桑原。
2008年 12月 18日