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2014年12月4日

akira's view 入山映ブログ 税金

 佐藤賢一の小説フランス革命(集英社2008年)を読んでいたら、面白い文章に出会った。人権宣言の第十三条は日本でいうところの納税の義務を謳うのだが、ここでは担税、つまり税を負担する、という表現が採られている。(フランス語で何というのか、読者の中にご存知の方があれば是非ご教示賜りたい。)そしてそれに続いて『草案では、冒頭に「担税とは市民それぞれの財産から一部が切り取られることである」と断られていた。従来の庶民意識からすれば、わからない心情ではないながら、それを(中略)削除する方向へと導いた。これまでも財産は公共の利益のために公的機関に委ねられているにすぎなかったし、でなくとも、これからは国民であり市民である人々が国家の主権者なのだ。自ら進んで担税するのが本当であり、社会の運営においては決して受け身であってはならない。』

 昨今の消費税論議、あるいは増税をめぐる議論の中ですっぽりと抜け落ちた感覚ではないか。のみならず、税金を外郭団体につぎ込んで「官民人材交流センター」なる組織で「渡り」の温存に狂奔する官僚諸氏の脳裏からはきれいさっぱり消えている原点の意識でもある。温故知新とはよく言ったもので、改めて税金の意義について考えさせられた。納税とはいうまでもなく税金を「納める」という意識の言葉で、佐藤氏の文中では(ロベスピエールが)削除しようとした考え方だ。そうではなくて、自らが「負担しよう」と考えるのが税金のあり方だ、という訳だ。与謝野大臣が得々として財政健全化の見地から増税必至と力説される時、このエトスを感じ取ることはほとんど不可能である。

 蛇足ながら「渡り」とは広辞苑によれば「職場をあちこちかえてわたりあるくこと。また、その職人。近世では中間(ちゅうげん)・小者などにいう。」とある。高級官僚諸公は近来、とんと中間・小者に成り下がったものと見える。

2008年 12月 26日



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