2014年12月5日
akira's view 入山映ブログ 公益法人制度改革(2)
公益法人制度改革についてはこのブログで何回も触れた。(最近では11.12「民に出来ることは民に(4)」)お役人の利権関連会社への天下りの「ほとぼりを冷ます」隠れ蓑としての公益法人ばかりが耳目を集め、「民」の手による「皆のため」の仕事をする、という本来の機能が忘れ去られつつある。のみならず、今回の制度改正なるものは、そうしたお役所の外郭団体には、あっさり「公益」性を認めるが、肝心の「民」の手になるそれについては、ああでもない、こうでもないと重箱の隅をつついてなかなかお墨付きを出さない、という「改悪」だ、ということについても何度も触れた。(2.7「公益法人制度改革」4.5「外郭団体(2)」)
それがどれほどのものであるか、一例を挙げれば、民間組織が「公益」に関する仕事をしていると認められるためには、(1)収入が支出を超えてはいけない(!このバカバカしさについては既述したので再度は触れない。)。そのうえ(2)「公益」事業を行うための費用が総費用の半分以上でなくてはならない。易しく言うと、ある組織が公益法人として認められるためには、ある年度の経費のうちで、公益事業そのもののために遣った経費がそれ以外の経費より多くなくてはならない。例えば、留学生や外国人研究者のために安くて良質な宿泊施設を建設・運営し(この部分は収益事業であるとされる。つまり公益事業ではない。)、あがった利益は奨学金として提供しよう、とすれば、宿泊施設維持運営のための経費は、当然奨学金運営(公益事業である)のための経費を上回る。これはダメ、というべらぼうな制度なのだ。これに加えてもうひとつ、(3)収支差額は組織内部に溜めておいてはいけない、という馬鹿な規定もあるが、それについてはいづれこのブログで取り上げる。
この公益事業比率50%条項は、多くの会員組織にとって致命傷になる可能性が大きい。わが国では、伝統文化の分野で会員組織の形態を取るものが多い。茶道や華道はその典型だが、囲碁の総本山、日本棋院もその一つだ。その日本棋院が、この公益性の認定を巡って、特に公益事業比率を満たすために四苦八苦しているという。それも当然で、棋士たるものは棋力の向上と錬磨に打ち込んでいればよいので、それがひいては伝統文化の質の向上(立派な「公益」だと筆者は考える)に連なる。時に初心者への手ほどきなど。人のためになることをなさるのはよいが、それがエネルギーの50%以上なんて言うのは冗談にもならない。プロ野球選手が。恵まれない子供たちを無料でスタジアムに招待するのは美談だ。しかし、それが収入の半分を超えなければ公益ではない、というのはまた別論だろう。
2008年 12月 28日