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2014年12月12日

akira's view 入山映ブログ 市民社会

 いまの日本をダメにしている主要な原因の一つとして官僚主義・予算主義を挙げ、その存在理由とその限界に就いてはこれまでに何回も触れた。(3.22-4.6「予算主義」3.31・11.7「官僚制」など)要は、お役所というのは大勢の人に均一に、かつ公平にサービスを提供するように制度設計され、かつ単年度予算主義を原則とするから、通常われわれが考える中・長期的な「責任を取る」体制にはなっていない。というより、そんなことは出来ない仕掛けになっている。別にそれが悪い訳でも、役人が気が利かないのがけしからん訳でも何でもない。ただ、そのようなものとして制度設計された役人が、なまじ気が利いたことをしようとして火遊びに夢中になると、誰も使わないドンガラ設備が乱立したり、既得権益の再生産に血道を挙げたりすることになる。だから、実直に先例踏襲、瑣末・事大主義でやって頂いている方が国民にとって被害は少ない。とはいいながら、権力や物欲志向の強い人間はどこにもいるし、それに群がるのが人間の性だから、役人や政治家が例外である理由ははない。いうところの政・官・財のトライアングルとはこのことなのだが、これについて悲憤慷慨している書物はそれこそ汗牛充棟だからそちらをご覧頂くとして、問題はいくら悲憤慷慨しようとも、「官」の機能を代替、とまではゆかなくとも部分的にであれ補完するような主体が存在しないところにある。これが存在しなければ所詮は「ごまめのはぎしり」の域を出ない。

 存在しない、ということは、明日突然にシルクハットの中から出てくる訳がない、ということだから、単なる「ごまめのはぎしり」や「痩せ犬の遠吠え」に終わらせないためにせめては今何が出来るか、ということになる。それより前に、代替・補完しうる存在というのは一体どんなものなのだろう、というのが今回の主題だ。それが見えなければおよそ議論が始まらない。ここで想定しているのは、納税者・国民・市民がさまざまな主題について、多様な価値観を持ちながらお互いに話し合う。あるいはそうした話し合いの場を提供したり、その場の設定を支援したりする。そして「一緒にやろうよ」みたいなアイディアを様々な形で創りあげてゆく。それが政治に対して、社会に対して、世論に対して影響力を持つようにしてゆく。これを仮に「市民社会」と呼ぼうということだ。いかにも乙女の祈りかあどけない夢物語にも聞こえようが、実はそうではない。

 ギリシャ・ローマの昔を別にすれば、「市民社会」というコトバそれ自体は近世ではマルクス主義が(否定さるべき概念として)愛用した言葉だ。皮肉なことに、その桎梏から逃れようとした中央ヨーロッパの人々が、ビロード革命を始めとする市民運動によって彼ら流の「市民社会」を築き上げたのだった。故事来歴はこれくらいにしておくが、今の日本で、かの鉄のトライアングルや既得権益の厚い壁に、「市民社会」が破壊とまではゆかなくても、一矢報いることができる、と考えるのがどれほど現実的だろうか、というのが次の論点になる。それだけではない。「市民社会」のイメージや、現実の存在としてのそれがいかなるものであるかが、先ず浮き彫りにされねばならぬ。空理空論、蜃気楼のような存在について語るのではさっぱり迫力がないからだ。(この項続く。)

2009年 01月 07日



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