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2014年12月26日

akira's view 入山映ブログ 平和維持活動

 自衛隊の海外派遣をめぐって、憲法第九条との関係で何ができて何ができないのか、さっぱり要領を得ない議論が延々と続いている。一つは自衛隊法の枠組みの外で、国連PKO活動以外の各種活動への参加(つまり当然のことながら海外派遣)に際してその都度国内法との調整、もっと具体的にいうと国会の議決を要するという仕組みがこのままで良いのか、という話。仮にこのタガを緩めて機動的な意思決定ができるようにする場合、どのような制限を加えるか。二つには、その中身に関係するのだが、武器使用がどのような条件のもとでなら認められるか。所謂交戦規則(Rule of Engagement)をどう定めるかという話。あるいは「丸腰」に限ることにするか。そんな議論が議論らしい議論もされないままに、及び腰で「最小限の」武器を持った自衛隊員が各地に派遣されている。いざドンパチが身近に起きたらどんなに心細いだろう。

 そんな状況の中で、丸腰の民間非営利組織(NGOあるいはNPOといわれる組織である)があちこちで地道な活動を続けている。ところが、組織本体を維持するための潤滑油ともいうべきオカネ(ちなみに海外活動それ自体の経費はクニが出してくれる場合も多い)がほとんどすっからかんで悪戦苦闘している、という事情については前回に触れた。民間組織と軍の関係については先に述べた(6.4「書評」)ので繰り返さないが、国内で幼稚としか言いようのないレベルの議論が横行している中で、お隣の中国の事情がどうなっているか。簡潔に紹介した記事が目に留まったので紹介しておく。CSISのPacNet Newslettter 2月3日号所載のストックホルム平和研究所(SIPRI)の Bates Gillと Chin-Hao Huang共著「中国の拡大する平和維持における役割」がそれである。

 同論文によれば、中国人民解放軍は「戦闘以外の軍事行動(MOOTW)」を21世紀における「新たな歴史的使命(胡錦涛)」と位置づけ、国連活動への参加を積極的に推進しているという。国連安保理の常任理事国としてはロシア、英国、米国を凌ぐ派遣実績があり、1980年代後半から各地に派遣された人民解放軍の人員は1万1千人を超える。(ちなみに日本は2千人弱。筆者。)この行動の意図は、急激に拡大する軍事予算に対する世界の懸念を中和すると同時に、人民解放軍の実戦能力の訓練にも役立てているとする。この方向性に対して国際世論はおおむね好意的であり、さらなる拡大を期待さへしているように見受けられるという。中国国内では、伝統的な国家主権尊重と内政不干渉という対外政策や、国内諸機関の官僚主義的縄張り意識もあって、この動向に対して必ずしも一枚岩の支持があるとは言い難いものの、廊坊の平和維持警察訓練センター、南京の国際関係大学の設置に典型的なように、着実に実績は蓄積されているとする。論文はこれら国連平和維持活動に対する参加のうち、四分の三がコンゴ・スーダンなどアフリカ向けであったことを指摘して、暗にその政治的意図を示唆しているものの、西側との協調行動をより深めることによって、中国が大国としての責任を自覚するようになることは歓迎しているかのごとくである。

 何も中国の向こうを張って、アジアにおける米国の盟友としての地位を確保せよ、と言いたい訳ではないが、あどけない国内論議にうつつをぬかしているうちに、既成事実が幾重にもまわりで形成されていることに対してはしっかりした認識が必要なのではないか。いうまでもなく、中国の積極的なアフリカ政策には資源外交の意図が透けて見える。思いつきや借り物の開発思想のつぎはぎの日本のアフリカ政策(1.26「TICAD」5.31「アフリカ」)とは好対照であるといってよいだろう。自衛隊の問題は、なにも憲法問題の側面だけではない。

2009年 02月 03日



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