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2015年1月3日

akira's view 入山映ブログ 佐々木忠次さん

 佐々木忠次さん、というよりわれらが忠さんは、(財)日本舞台芸術振興会(NBS)の理事長として、世界に冠たる東京バレー団を主催し、超一流の世界のオペラシアターを日本に招聘しつづけているバレー好き、オペラ好きにとっては伝説的な人物だ。その彼がNBSニュース紙上に二十年にわたって連載してきた辛口のエッセイ集をこの度上梓した。「怒っている人、集まれ!」(新書館・2400円)がそのタイトルだが、痛快無比、面白いこと請け合いだから、(彼に頼まれた訳でもなんでもないが)是非一読をお勧めする。

 芸術文化の世界における日本の官僚とお取り巻きの御用学者、パラサイトの人々(11.25「NIC」)の愚劣さ、鉄面皮さを正に歯に衣を着せず156話360頁にわたって、余すところなく描出している。この種の本にありがちな暴露的、キワモノ的な内容ではなく、心から舞台芸術を愛するプロモーターとして日本の文化芸術界をなんとかしたい、という熱情に溢れているから、読後感は極めて爽快である。(もっとも書中で批判の対象になった人々にとっては別だろうが。)

 看板に騙されて公演の切符を買って観に行って、ああ損をした、という思いを一度ならず経験してみると、やはり忠さんが呼んだカンパニーはモノが違う。これからは忠さんのだけにしよう、と思っていらっしゃる読者の方も少なくないだろう。なぜそんなことが起こるのか、カネにまかせて出演料をつり上げて、世界の相場を壊すようなことをしているのは誰か、というのがよくわかる。のみならず、鳴り物入りで出来上がった新国立劇場が、なぜあんな半端な観客数の劇場になったのか、それよりも、ドンガラだけで、ソフトが伴わないような情けないシステムがどうして成立してしまったのか、も一目瞭然になる。

 要は税金を湯水のように使い、それも肝心な芸術の質を高めるためにではなく、天下りを中心にした非生産的な管理費に消えている(一例を挙げれば、ヨーロッパの一流オペラハウスでも30人か40人しかいない管理運営の職員を、なんと150人抱えている。劇場が建設されるまでの「調査費」が150億円!)。といった、あちこちで見られている「外郭団体」の構図が新国立劇場よ、お前もか、という話である。さらに寒心に堪えないのは、民が苦労して育て上げた芸術家の「上澄み」ともいうべきオイシイ部分だけを官がかっさらって恥じない、とか、既に高い水準で存在している民の活動に支援をすれば何倍もの成果があがるものを、自己の権益化のために、レベルの高いとは言い難いシロモノに税金をつぎ込んで自分でやりたがる。などなど、このブログが再三指摘している(1.30「武士の商法」11.13-17「民にできることは民に」)現象が懲りることなく繰り返されている事実。さらにはそれを無批判に受け入れるのみならず、讃歌まで歌うマスコミのあり方(1.8「ミクロとマクロ」)などが慄然とするほど鮮やかに指摘されている。

 文化国家の建設、芸術水準の向上。金看板としては誰も反論できないスローガンが、官の手によって、いかに正反対の方向にまっしぐらに進められているか。その「唯我独尊」とも見られかねない語り口に、とかく誤解を招きやすいものの、バレーとオペラをこよなく愛する「めきき」として超一流の忠さんのこの新著は、是非広く読まれるとよいと思う。

2009年 02月 06日



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