2015年1月5日
akira's view 入山映ブログ オバマ大統領
蜜月期間中とはいえ、高らかに謳った超党派(bipartisan)の政策運営が上下両院で必ずしも形に現れなかった観のあるオバマ政権の初法案だが、今後の政権運営に今ひとつ懸念材料があるとIPSのTERRAVIVA2月6日号が報じている。それはタカ派からの軍事予算増加に向けての圧力だという。経済危機乗り切りのための大型予算に便乗して、さらなる軍事力増強を唱える論客が相次いでいるというのだ。
それも、極め付きの右派乃至はネオコンの牙城ともいうべきCSP(Center for Security Policy)やAEI(American Enterprise Institute)、さらにはフォックスニュースあたりからの声だけであるのならばともかく、マックス・ブート、ロバート・ケーガン、ウィリアム・ハートゥングといった右翼の論客達が、外交評議会(CFR)やワシントンポスト、あるいはウォールストリートジャーナル紙上で一斉に軍事費拡大に向けて論陣を張り始めているというから、その影響力は侮れないものがある。
初の記者会見で「政府は何もしないで手を拱いていろ、という人たちとは話し合いはできないが、中味についての議論ならば話し合いの余地はある」としたたかなところを見せたオバマ大統領だが、そのスタンスが仇となってこうした主張との妥協点を探らざるを得なくなる可能性も皆無とはいえまい。確かに日本と異なって、官僚組織のトップは政治任命(political apointee)の人々を据えることによって相当程度の「官邸主導型」運営は可能だ。しかし、米国の産軍共同体の強固さはアイゼンハウアーが嘆いた時からいささの変化も見せていない、というのもまた事実だ。ウォールストリートジャーナルによれば、軍事産業の三大勢力ロッキード、ボーイング、グラマン社が、ロビーイング費用を54から90%増加させたという。
イランとの対話、あるいはカルザイ政権とタリバン穏健派との接触開始、といった緊張緩和に向けての好ましい傾向がほの見えてきている時だけに、一層タカ派との話し合いの必要性が強まってくるのはパレスチナ問題におけるイスラエルの事情と軌を一にする。内憂外患、それこそ日本との比ではない難局の中に登場したオバマ大統領が、さらなるこの難題にどう対処してゆくのか。保護主義への傾斜に警告を発するだけではなく、わが国が米国政策に協力する姿勢や余地は大きいように思う。自衛隊の派遣だけが米国の意を迎える政策ではあるまい。それにしても、そうしたまっとうな議論以前にあっちにふらふら、こちらにぶれる政治指導者と、対案らしいものを未だに提示できず、事態の政局化にしか興味がないかに見える野党指導者にも困ったものだ。与野党に人がない訳でもあるまい。是非声を挙げて欲しいものだと思う。
2009年 02月 10日