2015年1月15日
akira's view 入山映ブログ 企業フィランソロピー大賞
(社)日本フィランソロピー協会の企業フィランソロピー大賞も、今年で6回目になる。フィランソロピーというよりは社会的起業家(social entrepreneur)というほうがよりふさわしいような、社会的マインドを持った起業活動が対象になっていることもあって、授賞式と同時に行われる事業内容の紹介がとても面白く、同協会の行っている「まちかどのフィランソロピスト賞」と共に、暇のある限り出席させて頂いている。今年も大賞の(株)フェリシモの社会文化活動の他に、大手の味の素が年間8億円を投じている多彩な途上国支援、摩周湖畔の宿「風曜日」のバリアフリーの宿泊施設、(株)丹青社のユニバーサルキャンプ、(株)ミセスリビングの「お母ちゃんの住まい=住育の家」が受賞した。事業内容は、それぞれがHPをお持ちのようだから、興味がおありの方はそちらを覗いて頂くとして、ここでは企業の社会的貢献一般について、少し触れてみたい。
最近流行のCSR(Corporate Social Responsibility)については、先に(07.12.26「CSR」)でその問題点を指摘したので今回は触れない。それよりも、日本の市民社会組織が抱えている最大の問題点である資源の乏しさと、それと原因となり結果となっているプロフェッショナリズムの欠如(08.12.31「プロとアマ」)を解決するためには、もちろん民間からの善意の寄付(配当を求めない投資)が重要なことは論をまたないが、それにはいくつかの障害がある。最大のものは知名度の低さと、それに伴う信用度の低さ、さらには上に述べたプロフェッショナリズムの欠如などであり、結果募金活動は思うに委せない。その結果がよく知られているような民間寄付水準の低さ(年間千億円程度。米国では20兆円を超える。)のみならず、その寄付も大半が信用度の高い老舗である「赤い羽根」とか日本赤十字、さらには国連機関であるUNICEFなどに、まさにセミ・ガリバー的に集中してしまうという事実に現れている。
市民社会が自前で募金、資源調達ができるようになるまでは、だからお役所からの補助金が大きな地位を占めることになっているのだが、容易に想像されるように制度設計の根本原理が異なるお役所のルールに縛られる結果、市民社会組織に妙に依存体質ができてしまったり、お役所仕事とのおつきあいで市民社会が「疲弊してしまう」(日本市民社会のリーダーの一人、シーズの松原氏の言。)結果を生んでいる。民間助成財団がほとんど機能していない日本では、だから期待がかかるのは企業、ということにならざるを得ない。市民社会の育成がどうして企業の守備範囲なのか、についてはさまざまな議論が可能だ。しかし、社会貢献活動やフィランソロピー、さらにはCSRを志すほどの企業であるのなら、その目的達成にとって、健全な市民社会の育成は不可欠だという認識を持つにさして困難はあるまい。自社の活動に、市民社会を織り込む。そのために筋の良い市民社会組織(NGO・NPOなど)を見分ける「めきき」を育てる。そうした「業」を日本企業が身につけてくれたらどんなに素晴らしいことだろうか。
2009年 02月 19日