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2015年1月28日

akira's view 入山映ブログ 市民社会(7)

 「市民社会に声を挙げさせるというのはどういうことか、について、主張そのものが分かりません。具体的な第一歩としては、人的なり金銭的な援助をはじめることだというのは分かりますが、せっかくですから、もっと掘り下げた「意味」について拝聴したい」というコメントを頂きました。願ってもないことですから、所論を述べてみたいと思います。

 第一に、クニと市場という社会機能の担い手は、当然のことながらそれぞれの制度設計の原理とも言うべきものに立脚しています。後者は基本的には価格機構を媒介項とした物資・サービスの需要・供給制度で、その原理下では優勝劣敗、つまりwinner takes all が本質になります。かつ、アダム・スミスが言ったように、このシステムに勝る物資・サービス提供のシステムはいまだ発明されていません。換言すれば、富の分配の平等化とか弱者保護というのは市場原理の外にある(外部経済)もので、それこそはクニというプレーヤーによって提供されねばなりません。そのためにはクニは暴力装置を独占して、その強権によって税金を徴収し、それを原資として社会的公正、あるいは様々な外部経済の内部化(労働者保護・不当競争防止はその一例)を図ります。その意思決定に民主主義原理が適用されるのも近世における唯一の普遍的合意といえましょう。チャーチルではありませんが、「民主主義は最悪の政治形態だということが出来る。これまでに試みられたあらゆる民主主義以外の政治形態を除けば、だが。」だからです。しかし、クニの制度設計の原理は官僚制を必然のものとし、それが「先例踏襲、繁文縟礼、瑣末主義、事大主義、責任回避、尊大横柄」(11.7「官僚制」)から逃れることができないのも歴史的に検証されていると言ってよいでしょう。

 そこで、第二に、それらの制度設計と補完的に働く第三の機能が必要とされるようになります。この三者の相互補完機能については井上達夫氏が「国家の組織的暴力と主権かが孕む脅威に対しては、分散的決定システムとしての市場と分権的秩序としての共同体(これを市民社会と読み替えます・筆者)が自由の保護膜となります。共同体の社会的専制に対しては、国家は人権保障と法の支配の貫徹によって、市場は共同体外での生活機会の提供によって自由を救済します。市場における経済権力の専制や搾取に対しては、国家は独占規制や社会保障によって、共同体は契約とは異質な互酬性原理に基づく相互扶助によって、自由を賃金奴隷になる自由や餓死する自由自由以上のものへと高めます」(岩波・新・哲学講義第七巻「講義の七日間」41頁1998)で明快に分析されています。

 市民社会(井上氏の言う「共同体」)がどのようなものであるかについては、筆者は設立・解散・参加・脱退が自由な組織体を想定していますが、これにはさまざまな変種が考えられるでしょう。とにかく三人のプレーヤーが相互牽制・相互補完によって同等の社会的機能を果たさない限り、市民の自由や福祉は危うくなる、というのが議論の根底にあります。そして、現在の日本においては、ことの外「市民社会」の機能が弱く、それを強化すること、その声をもっと大きなものにしてゆくことこそが最大の課題だと考えている、ということです。そのための具体的な手段としては、市民社会組織が他の二つに互してひけをとらないようなものに育たねばならない。目下のところ最大のネックのひとつは貧弱な資源である、と書きました。もちろん、それを阻害するとしかいいようのない今回の公益法人制度改革も大きな問題だ、とも指摘したところです。答責性の問題については、項を改めて書いてみたいと考えています。

2009年 03月 03日



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