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2015年2月20日

akira's view 入山映ブログ アカウンタビリティ

 ぴったりした日本語訳のないコトバ、というのがいくつかあるが、アカウンタビリティ(accountability)というのもその一つだろう。「説明責任」と訳されることが多いが、ただことの成り行きについて説明さえすればよい、という意味に受け取られがちだが、それよりはもう少し重い責任が課せられる、というのが原義に近い。というのもアカウンタブル(accountable)とは「自己の行為について責任を負う、あるいはそれについて説明し批判を受ける」(Longman)という意味があるからで、井上達夫氏が「答責性」と訳している方が原義に近いように思う。

 突然こんな話をするのは、先に(3.2「市民社会(6)」)触れたように、市民社会に対する批判として、この問題が提起されることが多いからだ。つまり、選挙によって選ばれた代議士、代議士によって(国会で)定められた法律、その法律の枠内で行動する官僚。それらはいかに悪法であれ、度し難い官僚主義であれ、選挙によって民意を反映するプロセスを経ている、という意味で一応の正統性(legitimacy)の推定を受ける。と同時に、行為の結果についての責任の取り方も、明定されているかどうかは別にして存在する(早い話が、選挙民の意に逆らう立法に賛成すれば、次回選挙で落選する)。それにひきかえ、自薦の組織であるに過ぎない市民社会組織は、無責任きわまりない組織であり、そんなものが影響力を行使する、というのはその根拠に乏しい。のみならず豊かな資源を持つものが不当な影響力を行使することに連なりかねない、という意味で民主主義原理に背馳することにもなりかねないではないか、という訳だ。

 たしかに、豊かな資金力を背景に自然資源保護のアドボカシーを展開する北のNGOが、例えばマグロ漁の禁止キャンペーンを張り、マグロ禁漁を実現させた。その結果、漁に依存して生計を立てていた南太平洋の島国の漁民達の生活が立ち行かなくなった。彼らは一体誰に、あるいはどこに向かってその不当さを訴えることができるか。NGOはどのような形で責任を取れるというのか、というのはもっともな疑問である。

 近代的法治国家にあって、法に抵触する行為は論外として、合法的でありながら予期せざる結果を生んだ市民社会組織の行動については、その予防と事後の救済にどれほどの自主的努力が払われているかを問う、というのが回答になる。はなはだ心細い回答のように聞こえるかもしれないが、本質的に国家機関等と異なり、強制力を持たない市民社会組織としては、これが唯一の対応策になると言ってよいだろう。換言すれば、市民社会組織は自制のモーメントを組織原理としてビルトインしているかどうか、を予め公示する義務がある、ということだ。それは二段構えで用意することができる。一つは自己の主張や行動に対する批判や反論を、公開したかたちで受け止めるチャンネルを設けておくこと。第二に、行動の結果に対してこれまた公開の形で評価する作業を行い、その結果を公示することである。(この項続く)

2009年 04月 08日



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