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2015年3月12日

akira's view 入山映ブログ 外郭団体(3)

 自治体が外郭団体などに出向させている職員の給与を、補助金の形で補填していることについて、これを違法として住民訴訟が提起される例が、新潟県、千葉県、大阪府等で相次いでいる。それらのうち、住民勝訴、つまりその支出が不当であるとされた事例について、損害賠償が提起される(つまり不当支出によって損害を被った自治体が、その支出について還付・償還を求める)ことになるのだが、自治体議会がこの債権を放棄する(つまり、ちゃらにする)議決を行うというケースが頻発し、これに対して、住民訴訟の意義を骨抜きにするものだ、という批判の声が上がっている。

 議決そのものの有効性についてはおそらく異論はないと思われるが、今回この事象を取り上げた理由は、これら一連のプロセスそのものの意義を問うためではない。それよりも、こうした事態に対処することを目的として制定されたと思われる「公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律」(平成18年法律第50号で改題・以下「派遣法」)に垣間見える「外郭団体としての公益法人」というイメージが、本来あるべき民間公益活動、あるいは民間非営利活動に対して与える破壊的な影響力、さらには、そうした背景の下に進行している公益法人制度改革の不毛さを指摘したい、と考えたからである。

 地方自治体がその職員を他の機関に派遣・出向させること自体には何の問題もない、と思う。それが意味あることならば、派遣先が株式会社であろうとも、非営利法人であろうとも、正当な手続きを踏んでいる限り結構な話だ。問題としたいのは、派遣法が「地方公共団体の事務又は事業と密接な関連を有するものであり、かつ、当該地方公共団体がその施策の推進を図るため人的援助を行うことが必要であるもの」として「公益的法人」を認知していることだ。逆もまた真、という論理的誤りを犯すつもりはないが、このイメージが不用意に定着した結果、お役所の「事務又は事業と密接な関連を有し」「その施策の推進を図るため」「援助を行うことが必要」な団体が「公益的法人」、さらには「公益法人」であり、ひいてはそういう団体と、民のしなやかな発想と行動力を体現する筈の民間公益活動が、同一のカテゴリーに属する団体として認識されるようになってしまったことだ。

 かつてマックス・ウェーバーが指摘したように、官僚の専門性とは、規則による秩序、ヒエラルヒー、文書主義などによって裏打ちされる。しかし、それは裏腹に形式主義、前例尊重主義、瑣末にこだわる訓估主義といった弊害を伴うものでもあるのは誰でも知っている。こうした特徴を、民が主導する「世のため人のため」の活動が備えるようになれば、それは自殺行為であるのは明らかだ。お役所の外郭団体は公益に奉仕する。だから民間の公益活動も外郭団体に要求される規律に服するべきだ、という倒錯した論理は、こう言ってのければその愚かしさは誰でも解る。それを回りくどい表現で公益法人制度改革の中に埋め込まれると、なんとはなく鵜呑みにさせられがちだ。奈良・平安の昔から脈々として続く日本の民間公益活動の活力を殺してはならない。

2009年 04月 30日



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