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2015年3月18日

akira's view 入山映ブログ 三大テナー

 圧倒的な「黄金のトランペット」マリオ・デル・モナコの後に、再び大向こうを唸らせるテノール三人が出現するのには20年くらい待つことになる。モナコの前の伝説と言えばかのカルーソーだから、こちらのインターバルは40年。してみると、超弩級のテノールの出現にはこの後何十年か待たなければならないのだろうか。

 その三大テノールも、パバロッティ逝き、一昨日の報道ではカレラスも演奏活動を終えるとされている。白血病の死の淵から生還した彼を囲んだのが世に名高い「三大テナー」の始まりだったから、もしかすると、再発したのだろうか。特に女性ファンの多かった彼のことだから、今頃は世界中至る所で紅いため息がもらされていることだろう。

 年令だけから言えばカレラスより5つも年上のドミンゴだけがまだ現役だ、ということになる。彼がワグナーを歌い出した時には、本当に喉が壊れてしまうのではないか、と素人は心配したのだが、全く平然と歌手と指揮者の二役をこなしつつ(もっとも指揮者としては凡庸の域を未だ出ていないようには思うが)、テノールとしてのレパートリーの広さは恐るべきものがある。愛すべき人柄の彼が、ついに最後の偉大なテノールになってしまった。

 オペラ歌手の年齢のことは言わないのが礼儀だが、そのドミンゴもとうに還暦を超えた。再び輝かしいオテロや向こう気の強いカバラドッシを日本で聞けることはなさそうなのが残念ではある。もっとも、日本のクラシック市場には随分いい加減なプロモーターもいるようで、よれよれになった往年のスターを呼んできては稼いでいる「象の墓場」みたいなのもあるから、後十年もしたら要注意かもしれない。さすがにドミンゴはそんな話には乗らないと思うけれど。

 オペラと歌舞伎の共通点については永竹由幸氏の名著(「オペラと歌舞伎」丸善ライブラリー)があるから、素人が再言することは控えよう。そんな伝統もあって、佐々木忠次さん(2.6)を筆頭に決して「めきき」に事欠かない日本のオペラ界なのだが、妙にお役人とそれに迎合する手合いが幅を利かせると、代々木の国立オペラ劇場のようななんとも中途半端なものができてしまう。のみならず、これに寄生する旧文科省の役人の数も決して半端なものではない、という惨事さえ現出する。まあ、それは傍論であるにしても。弦楽器のプレーヤーでは世界に冠たる地位を占めた日本人が、意外に声楽家では淋しいというのも、楽しく一級品のオペラに触れることの出来る機会を官民そろって潰しているせいもあるのではないか、と思ったりもする。

2009年 05月 10日



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