2015年5月20日
動物風景-16 荻野彰久 荻野鐵人
「何を話したいの?」とぼくは、さもめんどくさいとばかり言うと、眠りに落ちてしまったのかスピッツ嬢の声は急に黙りこんだ。がスピッツ嬢は眠ってはいなかった。まもなく不意に哀しげな調子を帯びた声でゆっくり静かに語り出した。
「動物や植物の生物のうちでも数百年、ものによっては数千年も生き続ける植物もあるというのにね・・・しかも或るものは、くる春ごとに新しく美しい花をまた持つというのにネエ、アンタ、そう思わない?」スピッツ嬢が訊ねるように云うから
「そうぼくは思わないネ」
「どうして思わないの」
「ぼくはもう眠ったのだもの」
「いいえ。ほんとにアンタは思わないの?」
「だってぼくたちは犬殺しに捕ったのだもの! 仕方がないよ。早く寝ろよ」
「死!こればかりは生まれながらにしてわたしたちが背負わされた宿命なのかしら?」
「当り前じゃないか」とぼくは、くすくす笑い、黙りこんだあと、
「バラの根にやったコヤシは花の色を一層美しくするように俺たちが死んだら犬殺したちが儲・・・・」とぼくは云い終らぬうちにうとうとと眠りに落ちた。