2015年5月26日
動物風景-21 荻野彰久 荻野鐵人
「しょってらあ、犬は犬でも俺はナ」とぼくはクンクンクンと笑った。
「偉いわ偉いわ、だからワタシ、アンタが好きなのよ!」
「何、言っているのだ!」
「でも、さっきも言ったけどなんだって、そんな美しい奥さんがありながら犬殺しなんかに捕まったのよ」
「うるっさいな、先にも言ったろ!さあ、いけ、と運命が言ってしめした道が、ぼくにはこれだったと。それにしても、メスどもは何だって、他人の秘密がそうも知りたいのだろう? それはナ、ぼくがナ、あの家に行ったときは、ジュリエットという娘が居たのだよ」とぼくは顔をあげ、思い出を辿るように眼を瞑(つむ)りながら、
「メスの上にオスが乗り腰を動かしてやっているだろう。そうだ。丁度今のようにときどき雪のあいまの明るい月夜だったね。ぼくはじっとして見ていられないのさ」と云い、なぜか途中で急にスピッツ嬢にウソが云いたい衝動にかりたてられて言葉を続けた。