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2015年6月11日

動物風景-32 荻野彰久 荻野鐵人

「行こう!」ぼくは脚を動かした。サササと雪が降っている音だけで、あたりは静寂だった。

「何処へ?」ぼくは落ちて来る雪を頭に受けながら、脚を動かしていた。と遙か向うに犬が! 5、6頭の犬が前になり後になり頭を上げて楽しげに走っている。里に帰ったようにぼくの心は急に陽気になって、そこを目がけて走って行った。

しばらく走ってぼくは脚を止めた。見ると人間が先頭に一人居て、顔だけが、こちら犬たちの方を向いていた。つまり、男は、後向きに歩いている、で犬の方は仔犬もあれば雌犬もあり雄犬もあり、ぼくは視線をすえてよーく見た。
すると、5、6頭の犬の中には「黒」も「白」も「米」も「秋田」もいる。いや、ぼくの恋人スピッツもいるではないか!

ぼくの心臓は急に拍動を早めた。そして一番後に又一人男が自転車に乗っていて、荷置に炭箱ほどの篭をのせている。が、この男は肩に銃を担いでいた。

「犬を連れて何処へ行くのだろう?」道が続いている先を眺めた。すると道は、葉を失ったポプラの木で囲まれた小舎へ通じていた。



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