2015年6月18日
akira's view 入山映ブログ 鳩山論文
先のジェリー・カーチスの講演(8.31「選挙(5)」)でも「評判が良くない」と指摘され、ワシントン辺りでも日本の新総理のものの考え方を知る(数少ない)情報の一つとして取り扱われているらしい鳩山さんのNYタイムス(電子版)のop-edを読んでみた。(http://www.nytimes.com/2009/8/27/opinion/27iht-edh…)
敢えて要約を試みれば、米国発グローバリゼーションの人間性無視から人間性を回復する為には「友愛」しかない。友愛とは資本主義の行き過ぎを是正し、伝統的地方経済を復権させるものだ、ということらしい。伝統的地方経済の回復こそが地域をコミュニティとして復活させ、人間性を取り戻させる、と。それは経済至上主義で片隅に追いやられた環境、福祉、教育といった分野に焦点を当てることにもなるのだそうだ。
それと同時に、友愛精神からの当然の帰結として、いわば地域重視の国際版として東アジアコミュニティ創設が国家目的になる、と。米国中心のユニラテラリズム、グローバリズムの時代は終わっている。米国と中国の狭間にある日本の国益のためにも、域内共通通貨と集団的安全保障に下支えされた地域統合のみが、有効な政策方針たりうる。という。
なんとも陳腐としかいいようのない内容の論文で、何の意図があってこんなものを投稿されたのか、まことに真意を疑いたくなるような代物である。それでも日本のリーダーになる人が書いたのだから、なにがしかのメッセージではあるのだろう、という訳で、数度にわたって表現の見える「米国発の」あるいは「米国主導の」望ましからざる事態、というフレーズから米国から「距離を置く」あるいは「対等の日米関係」(このどちらも意味は不明である。独立国領土内にこんなに多数の外国軍が駐留しているのはおかしい、とでもいうのなら意味はあるが。)というこれまでの民主党の主張と無理に結びつけて反米性を疑ってみたり、東アジア重視というのをことさらに意味があるのではないか、と考えたり(これだって文中に、この地域における米国のプレゼンスは地域安定の為に必須だ。ただ米国の政治的・経済的過剰介入を避けたいだけだ、と書いてあるのだから、ことさらの反米意図があるとは考えにくい。)することになった、というのがことの真相だろう。
これから四年間日本の舵取りをしてもらわなければならない鳩山さん、あるいは民主党の方々には、国内向けの曖昧な表現が国際的には通用しない、という認識を今一度持っていただく必要があるように思う。もちろん、日本国としてのありようをどう認識するか、という話と、それをいかに公表するか、というのは別の話だ。しかし、前者が存在しない、あるいはきわめてあやふやだ、というのなら、確とした意見ができるまで口を閉ざしている、というのがベストな選択だろう。
2009年 09月 04日