共立荻野病院コラム詳細
TOP > 共立荻野病院コラム一覧 > 蜘蛛-(10) 荻野彰久 荻野鐵人
  • 診療科目一覧
  • 内科
  • 胃腸科
  • リウマチ・膠原病科
  • アレルギー科
  • リハビリテーション科
診療時間
  • 外来診療時間

    休診日
    月〜金 午前9:00〜午後12:00
    午後3:00〜午後6:00
    土・日・祝日・年末年始・夏季
    (3日間)
  • デイケア利用時間

    定休日
    月〜土 午前9:00〜午後4:00
    日曜・年末年始
  • 院内のご案内
  • 医師紹介
  • 共立荻野病院デイケアセンターフラミンゴ
  • 住宅型有料老人ホーム プメハナ

2015年8月4日

蜘蛛-(10) 荻野彰久 荻野鐵人

チャンスを逃さず素早く掴むためには脚の上の関節という関節を丸く折れ曲げた、しかも緊張に満ちた窮屈な姿勢で見張っていなければならないのだ。

だからのんびりした気分や一寸した気晴らしはおろか、生理に必要のない上下の瞼(まぶた)を合わせて離す瞬きすら、いやときには、勿論あまり長い時間ではないが、息まで止めて緊張しなければならないと言わんばかりに細めた眼つきで見詰めている。

が、金魚を掴むこともなく、次々と夥(おびただ)しい空しい時間が、ガラスの上に坐り続けている彼の傍を流れていく――。

恐らく彼はそれに気付かないのだろう。

速やかに掴まえなければならないのは金魚であるのに、自分はなぜガラスの壁をいつまでも掴んでいるのか、ひょっとしたらどうでもいい、例えば隣のテーブルで一組の男女が話しながら摂っている食事を横目で見るような脇目を使ったのではないか、などという凝念を差し挟む様子を見せるどころか、近い将来において自分は必ず成功する見込みがはっきりあるのだと言わんばかりの確信に燃えた目付きで、今に、今にと金魚の方を見詰め続けるのだった。



共立荻野病院コラム一覧へ戻る