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2015年8月25日

akira's view 入山映ブログ 事業仕分け(7)

 佐藤勝彦先生によると、われわれ世代がホーキンスの名前とともに宇宙の始まりを垣間みたと思っていたビッグ・バンというのは、さらに精緻なインフレーション理論によって補強されているという。遠いこうした「過去を見る」ためには大口径の望遠鏡は有力な武器で、口径8.2メートルの日本のすばる望遠鏡もその一翼を占めているそうだ(学士会会報879号)。が、科学者の探求対象は留まるところを知らず、現在では100メートルクラスが検討されているが、口径が2倍になるごとに費用が6倍になるという(ちなみにすばるの建設費用は400億円といわれている)財政的制約の他、さまざまの技術的難点克服に向けての努力がなわれているという。

 こうした研究がどれほど人類のためになるのか。NASAのアポロ計画の後で良くいわれたのに、そこから派生する先端技術が市場を豊かにする(コンピューター・ネットワークはその一例)という議論である。しかし、これはむしろ異端の議論ともいうべきで、こんなことを言われたのでは、源氏物語の助詞の研究に一生を捧げたり、西洋美術史の研究にいそしむ学徒は立つ瀬があるまい。むしろ、日々のわれわれの生活から遠く離れた領域・テーマを研究しているほど真理の価値というのは客観的で議論の余地がないようにも見える。経済学、政治学、まして経営学などというもののもたらしたと称する「真理」と、アルキメデスの「エウレカ!」との違いだといっても良い。

 こうした無数の真理探究に向けての努力には、当然オカネがかかる。人件費だけ払っていれば良い哲学者や数学者と違い、望遠鏡やスパコンともなると、どれほどの桁のオカネがかかるかは先刻ご承知の通りだ。有限の資源を配分する、という話になると、しかし、これらさまざまの研究にどのような形で優先順位をつけるのかが問題にならざるを得ない。そんなことが誰に出来るのだろうと思う。事業仕分けが事業の手続き論と説明の瑕疵に着目したことに非難が集まったが、これは的外れだろう。誤解を恐れずに結論を急げば、最後は政治が決める他はない。好むと好まざるとに関わらず、税金を使う権能と責任は政府にしか存しない。いかに優れた政治家といえど、森羅万象全てに就いての知識を持つ訳もなければ、もっている必要もない。その知識なり研究なりがもつ意義と機能に就いて、偏らない要約が出来るブレーンが周りにいれば済むことだ。質の良い御用学者を周りにおいておく必要性を再三説いているのはその理由による。

 「質が良い」というのは、ノーベル賞を取ったというのとも、権力闘争の末にある組織の長に上り詰めた、というのとも違う。その善し悪しを「めきき」するのは政治家本人である場合もあるだろうし、アドバイザーの場合もあるだろう。言い古された言葉だが、まさに「事業は人」である。で、仮に人を得たとしても人間のやることだ。そこには当然あやまちが発生する。民主主義の長所は正しい結論を得ることより、誤ったそれを是正する時にこそ発揮されるのだが、それはひとまず措こう。核兵器や細菌兵器のように明白なあやまちさえ是正できないのに何を言うか、と嗤われそうだが、事業仕分けの意義についての議論というのは、この視点を抜きにしては的外れになるといいたかったのが真意である。

2009年 12月 03日



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