2015年9月2日
akira's view 入山映ブログ アフリカ(4)
国内情勢は言うに及ばず、国際的に見てもデンマークのCOP15で中国が「盗人猛々しい」という表現を思い起こさせるような発言をしたり、中東の政権腐敗が止まるところを知らなかったり、まことに多事で、アフリカどころではない、ということかもしれないが、敢えて「アフリカ」にこだわることにする。所謂南北問題とか、開発・貧困問題の全てがこの地域には存在していると思うからだ。
前回では農業生産性の向上が飢餓問題解決、ひいては開発の第一歩だ、という話をした後で、生産性向上の技術は既に存在している、にも関わらず農民の生活は一向に良くならない、と述べた。その原因はここでもおおざっぱに言うと二つあって、一つは、技術普及の結果として、ある農村でソルガムやメイズ(トウモロコシと稗・粟だとお考えいただきたい。サブサハラアフリカの基幹穀物である)が3倍、5倍獲れたとしよう。確かに飢えからは解放されるが、農民は少しも豊かにならない。なぜか。先ず第一に余剰穀物を蓄えておく貯蔵設備が皆無。したがって、虫害や劣化を避けるためには、手早く売却なり、物々交換なりをしなくてはならない。ところが、市場、あるいは換金なり交換が出来る場所までの道路もなければ運搬手段もない。だから、農村に出入りする商人(middle manといわれる)に委ねるしかないが、これが商売が上手で(というか悪辣で)豊作なら徹底的に買い叩く。結果農家の手元に残るものは、豊作であろうがなかろうが、ほとんど同じということになる。
二つ目はその裏腹だが、全土に散在する農村に技術普及を一網打尽に行なう術がない。もっとも農民というのは実に利に聡いし、保守的どころか収穫量が上がるという手法が知られれば、あっという間に道なき道を経由してその技術は広がるから心配ないが、悲しいかな、化学肥料と改良種子を隅々まで伝播させるほどの資金力も、人材も不足している。のみならず、第一番目に触れたように、単位面積あたりの収穫量を飛躍的に増大させたとしても、貯蔵施設・道路などのインフラが整備されていなければ何にもならない。土建国家日本と冷やかされてすっかり心を改めてしまったかに見えるわが国のODAだが、とんでもない話で、アフリカ農村にはインフラ整備こそが最重要なのだ。ところが、「かくあるべし」という先進国からの政策押し付けに対する批判が強い(日本は特に戦後賠償からODAが始まった経緯もあって、日本流の考え方の押し売りには極度に臆病になっている)こともあって、すべからくODAは現地からの「要請主義」によるべし、という風潮が存在する。それでも構造調整だ民主主義だ、と押し売り好きな西欧諸国は懲りもせずやっているが、先にも述べたように、その成果たるや惨憺たるものがある。だから余計に現地政府の言う通りの優先順位で事業をやりましょう、というムードになる。現地政府というのは大概の場合腐敗している(それも並や大抵ではない。日本にも腐敗は存在するが、アフリカに較べたら可愛いものだといってよい。)から、農村に対するインフラ整備などより、都市住民におもねったり、袖の下がより簡単に入る事業の方に目が向くから、首都のテレビのカラー化は進むが、農村はほったらかしになる。
それではそんな腐った政府などは相手にせず、草の根にじかにオカネを使ったらどうか、さもなければ、一国を相手にせず、地域連合体のようなもの(アフリカには既に幾つか存在している)を相手にしたらどうか、その方が多少は腐敗の度合いが少なかろう、という話になるのだが、これがまたうまくゆかない。その間の事情に就いてはまた次回。
2009年 12月 11日