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2015年9月4日

akira's view 入山映ブログ アフリカ(5)

 再びアフリカの話に戻る。政府が腐り果てているのなら、そんなものは相手にするな。真に援助を必要としている現場を相手にしてはどうだ。それこそが草の根というものではないか、とか、クニなどというものは人為的な創造物に過ぎない。そんな枠組みにこだわらないで、物理的条件を共有する民衆を相手にするか、せめてクニの連合体を相手にして、「地域」とか「広がり」を対象にする方が合理的ではないか、という意見が出そうである。また。事実あちこちでそういう意見が述べられ、中には実行しているひとびとも存在する。

 しかし、いかに腐敗していようとも国家は国家だ。中国やミャンマー(一緒にされたら怒るかもしれないが)政府の民主運動家に対する態度を見れば解るように、気に入らない人間に対しては、嫌がらせから弾圧に至るまで何でも意のままなのを通例とする。早い話が入国ビザ、滞在ビザから始まって、居住空間から生活必需物資の調達に至るまで、公然と政府に反旗を翻していては仕事にならない。ここから先は第一回目に述べた因果関係の連鎖の話になるが、そもそもこんな妙な政府が出来たのも、植民地時代の余波であるのみならず、東西冷戦時代に腐敗承知で両陣営が共に政権を抱き込もうとしたことにも大きな原因がある。ついでに言えば、まともな農民、農村が成立しなかったについても、植民地経営に起因する部分が大きい。南アフリカのアパルトヘイトによって農村そのものが壊滅してしまったのは極端な例だが、輸出用の換金作物だけ作っていれば良いので、食料は輸入に依存すればよい、みたいな体制は大なり小なりサブサハラ全土に存在した。

 アフリカ独立運動から民族意識の覚醒の時期を経験しても、なおかつ植民地時代の傷跡について過去形で話すことが出来ないのもアフリカの特徴の一つだろう。なに、日本だってアメリカ占領時代のメンタリティからまだ抜けきれていないから別にアフリカに限ったことではない、と言ってしまえば身も蓋もないが、ことはもっと深刻なのだ。一致して宗主国に反旗を翻すことのないように、部族間、種族間は言うに及ばず、徹底して分割・反目させる政策が今日まで尾を引いている例は枚挙にいとまがない。のみならず、それを克服、近代化して国民意識、あるいは市民意識が醸成される以前に、多くのアフリカの国々で石油を含む豊かな鉱物資源が発見されてしまった。植民地時代に既にダイヤモンドや金を中心に外国資本が支配する経済が成立していたことは良く知られているが、今度は世界中の各国、各資本が資源を求めて狂奔する。なりふり構わぬ中国のやり口は日本で良く報道されているが、なに、よそのやっていることも本質は大して変わらない。そういう連中にとっては、腐敗した政権ほど相手にし易いものはないのは明らかだろう。

 本来ならば国民に均霑されるべき資源収入が、一部王族や特殊権益を持ったグループに独占されるのもアフリカに限ったことではない。しかし、それが統治機構の不在と、それによって政策はおろか施策実現が不可能というレベルになってくると、ことは大統領の私的財産がスイス銀行に何十億ドルも預金されている、という話とは全く異質のものになる。そういう政治体制、あるいは民主主義の不在、といった問題点は旧植民地時代に起因する、という指摘はあるいは正しいかもしれない。しかし、過去に遡った犯人探しが明日の発展をもたらすと限らないのはアフリカも同様であった。では何をどうすれば良いのか、そんな難問に答えられる人がいる筈もないが、次回にそれを試みてみたい。

2009年 12月 13日



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